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2024年12月12日(金)

求められるサステナビリティへの貢献

株式会社エンライト 伊藤 元昭
 

半導体産業のさらなる進歩と発展は、豊かな生活の実現やあらゆる産業の成長を支える必要条件となりました。半導体の応用はこれまで以上に拡大し、その需要は高まっていくことでしょう。半導体市場は2030年に一兆米ドルまでに成長するとも予測されています。

同時に、豊かな生活や産業・社会の成長を持続可能なものにしていくためには、深刻化する気候変動をはじめとする地球環境保全に関する課題に取り組んでいく必要があります(図1)。

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図1 地球環境保護は、世界が一丸となって当たる取り組み
出所:AdobeStock

 

持続可能(サステナブル)な社会の実現に向けて、半導体が果たす役割に大きな期待が寄せられています。再生可能エネルギーによる化石燃料の代替や省エネルギー化を後押しする高度なパワーエレクトロニクスやIoT、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を実現するための基盤となる情報通信プラットフォームなどは、いずれも半導体の応用分野です。

 

GXに欠かせない半導体、同時にサステナビリティに向けた課題も

ただしその一方で、半導体の製造過程で、大量の電力と水を使用し、地球温暖化ガス(GHG)の排出やPFAS等の化学物質管理といったサステナビリティへの挑戦も求められているからです(図2)。

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図2 半導体の製造では、大量の電力・水を使用、適切な化学物質管理も必要
出所:AdobeStock

 

大規模な半導体工場では1カ所で100万kW電力を消費しています。これは大型商業用原子炉1基分に相当する莫大な量です。電源を火力発電に頼っていたら、当然、CO2を大量排出することになります。しかも今後、AIやデータセンターの需要が増加することにより、電力需要も大幅に増加することが予測されており、その使用時には、半導体製造時よりも多くのCO2を排出するというデータがSEMIから出されています。また、一般的な半導体工場では1日に約2000万リットルもの水を、超純水に加工して利用しています。これは7万人規模の街の1日の消費量と同等量になります。

さらに、世界の半導体産業は、生態系や人健康に悪影響を与える懸念があるPFAS (ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)や、CO2よりも温室効果への影響がはるかに高いガスなどもエッチングやクリーニングの工程などで大量に使用されています。

GXに欠かせない半導体ですが、同時にサステナビリティに向けた課題への対応も求められているのです。

 

社会を支える半導体産業、だからこそ他産業と同等以上のGXが必須

現在、持続可能な社会の実現に向けて、世界中のあらゆる産業・業種の企業が一丸となって取り組んでいます。半導体は、脱炭素化や循環型社会の構築を推し進めるうえで重要な物資であることは確かです。さらに、社会のデジタル化や経済安全保障などの面での戦略物資にもなっています。しかし、役立つ面、重要な面が多いからといって、持続可能な社会を目指す取り組みから除外されるわけではありません。潜在的課題が大きい産業だからこそ、また重要な役割を担っている産業だからこそ、率先して自ら取り組みを加速させていく必要があると言えます。

しかもこれからの半導体ユーザーは、半導体メーカーおよびそのサプライヤーに対して、これまで以上に持続可能性に関する貢献を求めるようになることが確実です。

例えば半導体ユーザーである電子機器メーカーには、自社製品の生産で直接排出するGHGの削減(スコープ1)だけでなく、生産時に利用する電力などを生み出す過程での排出する分の削減(スコープ2)、さらには原材料の調達から製品の使用や廃棄に至るまでの全ての過程で発生する排出量の削減(スコープ3)も求められるようになってきています。つまり、半導体メーカーがチップ製造時に排出したGHGは、スコープ3の観点から、ユーザーが排出した量として組み入れられてくるのです。

そして、これから多くの国や地域が導入するカーボンプライシングに沿った税制や経済的仕組みの中では、こうした製品のサプライチェーン全体でのGHG排出量がコストに換算され、企業の財務諸表上に上がってくることになります。近い将来、各半導体メーカーには、製品ごとのGHG排出量(プロダクトカーボンフットプリント:PCF)の開示が求められることになることは確実だと言えます(図3)。ユーザー企業は、排出量の少ない製品・メーカーを選ぶようにもなりそうです。また、半導体工場の建設や増強には巨額の資金が必要ですが、こうした取り組みの度合いが、融資や投資の条件になる可能性もあります。

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図3 製品カーボンフットプリントを公開する半導体メーカーが増えてきている
出所:Infineon Technologies

 

化学物質管理に関しても同様に、ライフサイクルアセスメント(LCA: Life Cycle Assessment)に基づく評価による管理が求められるようになってきています。LCAとは、製品のライフサイクル全体(資源やエネルギーの採取から、原料の生産、製品の生産、流通・消費、廃棄・リサイクルまでの流れ)を通じた環境への影響を評価する手法のことです。自社で直接排出・廃棄する有害物質だけでなく、ライフサイクル上のユーザーや請負業者が排出・廃棄する分も含めた排出量管理が求められているのです。

さらに、自発的対策だけでなく、強制力を伴う規制が実施される国や地域も増えてきています。欧米を中心にPFAS規制強化が進められており、製造プロセスでのPFAS使用が不可欠な半導体産業には強制力を伴って対応が求められています。2023年1月、REACHにおけるPFAS規制案が公表されるなど、欧米を中心に世界的にPFASを規制する動きがでてきています。

 

SEMICON Japan 2024会場内で、サステナビリティ関連情報を多面的に発信

上述した様々な持続可能な社会に向けた課題へ対処するため、SEMIは、「サステナビリティ・イニシアティブ」の活動に注力し、半導体業界における持続可能性を推進する包括的な取り組みを行っています。グローバルに3,500社あるSEMIの会員企業はもとより、政府、学会なども協力して広範な取り組みを推し進めています(図4)。

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図4 SEMIが推し進める持続可能性を推進するための包括的な取り組み「SEMIサステナビリティ・イニシアティブ」
出所:SEMI Japan

 

2022年11月には、半導体気候関連コンソーシアム(SCC)が発足。半導体のグローバルサプライチェーンを代表する90社以上が参画・協調して、「協調」「透明性」「野心的目標」という3つの指針に沿って、GHG排出量の把握、目標設定、削減に向けた活動を加速させています。「温室効果ガスの排出を継続的に削減するために共通のアプローチ、技術革新、コミュニケーション手段において足並みをそろえる」「活動の進捗とスコープ1、2、3の温室効果ガス排出量を年次発表する」「2050年までのネットゼロ・エミッション達成を目標に短期および長期の脱炭素化目標を設定する」といった取り組みを推し進めています。PFAS問題については、SEMI PFAS作業部会/PFASイニシアティブといった枠組みを立ち上げ、産官学が連携して取り組みを積極的に進めています。2024年には、「SEMI ジャパン サステナビリティ委員会」も発足し、国内での活動をさらに強化しています。

そして、2024年12月11日(水)から東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan 2024」には、半導体業界が取り組むべきサステナビリティに関する最新情報を得る場が数多く用意されています。会期3日目の13日(金)に東7ホールのTech STAGE SAKURAにてサステナビリティにフォーカスしたフォーラム「Sustainability Summit」を開催。ここでは、各界からの有識者を招き、地球環境の保全と世界経済の発展を支える半導体産業の果たすべき役割と道筋を議論します。

また、会期中 東7ホールの特設ステージでは、半導体業界でのサステナビリティに対する取り組みの情報共有の場「SustainabilityHUB」を設置。ここでは、製造工程の効率化や環境負荷の低減、サプライチェーン全体での協調など、持続可能な未来を目指す各社が推進する取り組みを紹介します。また、今年から始まったSEMI Japan Forestでは、ウェブ上でクリックするだけで簡単に熱帯雨林に植林し、CO2排出削減に貢献できます(1本80セント、25本から植林が可能)。半導体業界でのサステナビリティに対する貢献に向けて、共に取り組む他社との対話の糸口としてみてはいかがでしょうか。

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