2023年11月15日(水)
価値創造の新潮流を提示するAPCS、脱炭素化の手段を提案するFLEX Japan
株式会社エンライト 伊藤 元昭
半導体製造における後工程での進化・変革が、技術とビジネスの両面で急激に進んでいます。変化の度合いを見れば、前工程での進歩よりも大きく速く進んでいるかのように見えるほどです。今や、後工程でのイノベーション創出は、半導体チップの価値向上に欠かせない、投資価値の高い手段となりつつあります(図1)。
図1 最先端の後工程技術を活用して製造されたロジックチップの例
出所:Intel
最先端チップの作り手と使い手双方が渇望する後工程でのイノベーション創出
これまでの半導体の製造工程では、ウエハー上に微細回路を形成する前工程と、チップをパッケージ中に封止して電子機器中に組み込みやすい形へと仕上げる後工程は明確に区別されていました。前工程は連続的にチップを作り込むプロセス技術であり、どちらかと言えば化学品や医薬品、食品の製造工程に近いものです。これに対し後工程は、多様な部品を組み合わせて目的の製品に仕上げるアセンブリ技術です。自動車や家電製品の生産工程に近いと言えるでしょう。それぞれに求められる生産技術の注力点が異なるため、前工程と後工程を別工場にしている半導体メーカーは多くあります。
ところが最先端の半導体チップの製造においては、前工程と後工程の境がなくなってきました。半導体の前工程で技術とビジネスの両面でリードしている台湾TSMCは、「InFO(Integrated Fan-Out)」や「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」と呼ぶ後工程技術に注力。これらの最先端後工程の適用が、同社の競争力の高い最先端前工程を利用する際の大前提となりました。今では、大面積チップを機能や特性の異なる回路ブロックへと個片化し、良品チップをパッケージ上で組み立てる後工程技術である「チップレット」は、最先端の微細加工技術を適用した高歩留まりの量産を実現するための技術として欠かせなくなりました。
また、最先端のメモリー領域においても、同様の前工程と後工程の融合が進んでいます。高性能コンピューティングや人工知能(AI)に関連した処理を実行するデータセンター向けサーバーのメモリーとして、データ転送時の帯域幅の高いDRAMである「HBM(High Bandwidth Memory)」の活用が広がっています。HBMは、複数チップを3D積層し、チップ間をTSV(Through-Silicon Vias)を使用して高密度実装したメモリーです。その実現には、前工程と後工程の融合させた設計・製造が必須になります。
その一方で、電子機器の開発・製造と半導体後工程での価値創出の境目もなくなりつつあります。後工程技術の進歩によって、微細加工技術の世代、製造に適用するプロセスや材料、製造元などが異なるチップレットを集積し、パッケージレベルでシステムを多機能・高性能・小型化できる「ヘテロインテグレーション(HI)」と呼ぶ半導体チップの設計・製造手法の利用が広がりつつあります。チップ全体を同じ製造プロセスで作るモノリシックなSoCでは実現できなかった、付加価値の高い半導体モジュールを実現できるため、半導体ユーザーが自社製品の差異化に向けて投入するカスタム半導体を手に入れる手段として注目しています。こうした状況を受けて、OSAT(半導体後工程と検査工程の受託サービス)とEMS(電子機器の受託製造サービス)の連携・融合が進行中です。OSAT大手である台湾ASEやSPILは、EMSの買収もしくは連携を強化しています。
フロア面積を昨年比1.4倍に拡大して開催されるAPCS
これまで「SEMICON Japan」は、半導体戦略が策定される以前から寄り添い、日本での半導体産業の再興を見据えた最新の状況認識と取り組みの経過、さらには次に向けた展望を常に発信し続けてきました。
後工程での技術・ビジネス両面での激しい変化を受けて、2023年12月13日~15日に開催される「SEMICON Japan 2023」に併せ、後工程技術に特化した専門展示会「Advanced Packaging and Chiplet Summit(APCS)」が昨年に続いて開催されます(図2)。後工程は、チップの使い手である応用機器メーカーによる機器/システム開発との接点が密な技術分野です。半導体業界の方々だけではなく、応用機器メーカーの方々にとっても、未来を拓く情報が得られる機会になりそうです。
図2 昨年開催されたAPCSの様子
「半導体パッケージング業界の新時代、進化の方向性」をテーマとする今回のAPCSは、フロア面積が昨年比1.4倍に拡大して開催されます。2nm以降の最先端製造技術での製造受託サービスの提供を目指すRapidusの出展も決定。最先端の後工程技術開発をリードするキーパーソン、チップ製造に適用するために不可欠な革新的な装置・材料・設計環境などに関する情報とサプライヤーおよびその最新製品が一同に会する場となります。
APCSでは、業界をリードする主要企業が後工程に関連した最新技術やサービスを披露する「展示エリア」、最先端技術の開発と製造への適用をリードする世界のトップ半導体メーカーとサプライヤーから多数のキーパーソンが登壇する「カンファレンス」、この領域の世界のVIPやキーパーソンが参加して関係づくりと情報交換を行う場「ネットワーキングイベント」が用意されます。
展示エリアは、東京ビッグサイト 東1、2、3の各ホールにまたがって設置されます(図3)。ここには、70社~80社が出展。各社からは、時代の要請に応える後工程関連の技術・製品・サービスの展示が披露されます。
図3 2023年のAPCSとFLEX Japanの展示エリア
世界の最先端後工程技術の動きと日本における取り組みの展望を知る絶好の機会
カンファレンスは、展示エリアに隣接する「SuperTHEATER」でのキーノート「Advanced Packaging Chiplet Summit 2023」、東ホール8 PremiumCLASS Aでの半導体製造の国際技術シンポジウム「STS(SEMIテクノロジーシンポジウム)」中「パッケージング」と「テスト」のセッション、東ホール8 PremiumCLASS Bでの「最新パッケージ技術の標準化ワークショップ」、東7ホール TechSTAGE FUJIでの「APCSテクノロジーセッション」と「EDAセッション」の4カ所に分けて開催します。
このうち、SuperTHEATERでは、チップレットを活用した高付加価値プロセッサで世界をリードする米AMD、パッケージ基板へのガラスの採用で話題を集める米Intelなど、最先端後工程技術の使い手として技術とビジネス両面での変革を進める半導体メーカーが登壇。加えて、新たな潮流として、半導体のユーザー企業がチップレットを組み合わせて求める独自システムモジュールを開発・製造できる環境の提供を目指すスタートアップ、米Zero ASICが、新たなビジネスモデルについて語ります。
加えて、経済産業省の半導体・デジタル戦略検討会議のメンバーである東京理科大学大学院MOTの若林秀樹 教授、日本での先端半導体の設計、量産向け要素技術の研究開発を担LSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center)において半導体回路設計技術を確立する責任者である東京大学の黒田忠広 教授、Rapidusにおける後工程の責任者である折井靖光氏など、日本の半導体産業の再興に直接関わっているキーマンも登壇。後工程での技術とビジネスの革新の中で進める日本の取り組みについて語ります。
さらに、「チップレット時代の幕開け」と題したパネルディスカッションも企画されています。最先端後工程技術の作り手と使い手、さらには設計ツールベンダーやアカデミアが、チップレットを活用したビジネスを構想・実践する際の課題、今後の展望、日本企業が向かうべき方向について議論します。
12月14日の17時20分からは、ネットワーキングの場として、SuperTHEATERの会場にケータリングを出し、カンファレンス講演者や出展社を集める「APCSネットワークオンパーティ」を開催します。革新的技術の創出には多様な知識の融合が欠かせません。APCSは、思ってもみなかったような知識との出会い、新たな気付きの場となることでしょう。
サステナビリティに貢献する技術の情報を発信するFLEX Japan 2023
SEMICON Japan 2023では、プリンテッドエレクトロニクスやFHE(Flexible Hybrid Electronics)、スマートテキスタイル技術の専門展示会「第7回 FLEX Japan 2023」も開催されます(図4)。軽く・薄く・曲がる柔軟な電子回路の実現に向けた技術とその応用に関する最新の成果・製品を集める同展示会。今回は「サステナビリティがつくるビジネス新時代」をテーマにして開催されます。
図4 昨年のFLEX Japanの様子
エレクトロニクス業界では、欧米市場を中心に、温暖化ガス(GHG)排出など環境に配慮し、資源や既存製品の有効活用を推し進めるための規制や税制が課される動きが顕在化してきています。プリンテッドエレクトロニクスでは、配線を描く部分だけに導電材料を塗布して電子回路を形成するアディティブな製造方法が使われています。このため、使用する材料を最小限に抑え、環境負荷の低い電子回路基板を作成する技術としても注目され始めています。
FLEX Japan 2023は、東2ホールのSuperTHEATERに隣接する場所に展示エリアを設置。また、12月13日に東7ホール TechSTAGE FUJIで開催される今回のFLEX Japanのカンファレンスでは、エレクトロニクス業界を取り巻くサステナビリティに向けた動きや、社会の要請に応える技術・製品・サービスの動きに関する最新動向にフォーカスして情報発信します。
関連セミナー
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Advanced Packaging Chiplet Summit 2023
グローバルリーダーによるパッケージング技術最前線と、日本技術の方向性
日時:2023年12月14日(水) 13:50 ~ 17:00
会場:東京ビッグサイト 東2ホール SuperTHEATER
参加費:無料
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FLEX Japan 2023
プリンテッドエレクトロニクスによるサステナビリティ新時代
日時:2023年12月13日(水) 13:50 ~ 17:00
会場:東京ビッグサイト 東7ホール TechSTAGE FUJI
参加費:無料