メインコンテンツに移動

2025年12月5日(金)

今すぐ着手すべき設計人材の育成、支援イベントをSEMICON Japan 2025で開催

株式会社エンライト 伊藤 元昭
 

日本国内では、半導体の製造分野への投資が積極的に行われています。これによって、先端チップを大量かつ安定的な製造が可能になり、国内産業の競争力強化につながると期待されています。そして、次の段階の取り組み課題として、特定の半導体応用機器やサービスに最適化した専用チップを設計する体制の整備が浮上してきています。

先端半導体を設計できる力を持つ半導体メーカーは国内にも複数存在します。しかし、1990年代後半以降、ソフトウエアによって機器・システムを差別化する機運が急拡大したことから、応用機器メーカーの多くから独自のカスタムチップを設計する能力が徐々に失われてきました。

ところが世界では、ソフトだけでなく、ハードウエアとりわけ半導体チップを独自開発することによる電子機器や情報システムの高付加価値化に取り組む企業が増えています(図1)。ソフトだけに頼った製品開発では、機能・性能面で差別化しにくくなってきたからです。クラウドサービスやスマートフォン、ソフトウエア定義車両(SDV)のように、独自半導体チップとソフトの開発・管理・配布環境を組み合わせて、新たな高付加価値ビジネスモデルを実践する企業も増えてきています。
 

図1 半導体チップを独自開発する機器・システムメーカーが着実に増えている


図1 半導体チップを独自開発する機器・システムメーカーが着実に増えている
出典:Googleの生成AI「Nano Banana Pro」で筆者が作成

 

現時点で表面化している独自チップの開発に取り組む企業は、巨大IT企業や世界的な自動車メーカーが中心です。このことから、「独自開発に踏み切ることができるのは、圧倒的な資金力と人材力を持つごく一部の企業だけ」と考える人も多いかもしれません。ですが実際には、独自半導体チップの開発に取り組む企業の裾野は着実に拡大しつつあります。日本企業も例外ではありません。車載システムや産業・業務用機器、オフィス機器、ゲーム機、デジタルカメラなど、日本企業が高い競争力を持つ領域では、独自チップを設計する例が増え、その動きも加速しています。

 

設計人材育成は1日にしてならず

ハードによる機器の差別化が重要になる時代は、着実に到来しつつあります。現時点で半導体チップの設計の必要性を感じていない企業であっても、今から、独自チップ開発に取り組むための準備を進めておいた方が良いかもしれません。特に設計人材の育成に関しては、すぐにでも取り掛かるべき課題であると言えそうです。欧米ほど人材の流動性が高くない日本においては、独自チップ開発の必要性を感じた時に、必要なスキルを持つ人材をタイムリーに確保できるわけではないからです。

「独自チップが必要ならば、カスタム設計を受託する半導体メーカーに依頼すればいいのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、価値あるチップを企画・仕様決定し、適切な開発・製造を行うためには、発注側も半導体の相応のリテラシーを持つ必要があります。半導体チップに限らず、カスタムシステムの委託開発の成否は、発注側の明確なビジョン、チップ設計による価値創出に関する専門的知見、開発プロセスに対する深い理解などの有無によって決まります。

とはいえ、いきなり高度な高付加価値チップを設計するための知見やスキルを養うことは困難です。まずは、「半導体チップの設計とは、いかなるチームによる作業フローの中で、ハードウエアに付加価値を作り込んでいく作業なのか」「チップ設計には、どの程度の労力・時間・コストが必要なのか」「求めるチップを設計するためには、いかなる知見・スキルを磨く必要があり、設計を支援する手段としてどのようなエコシステムが存在するのか」、チップ設計の全体像を肌感覚で理解するところから始める必要があります。必要性が高まってからこうしたスキルを養おうとしても、間に合いません。

 

SEMICON Japan 2025で、設計人材育成を後押しするイベントを開催

SEMICON Japan 2025では、日本での設計人材の育成を後押しするイベントを用意しています。

まず、会期初日の2025年12月17日(水)には、SoC設計を学ぶ講義とハンズオンで構成する、チップ設計者の育成プログラム「The Game 半導体の未来を創るために〜SoC設計セミナー」を開催(有料)します(図2)。会場は東京ビッグサイト、会議棟610会議室、参加費はSEMI会員40,000円、一般80,000円(昼食・懇親会費用含む、いずれも税別)です。参加対象者として、システム全体・半導体・ソフトウエアの研究・開発・設計に携わるエンジニア、経営・マーケティング・事業開発・事業戦略に携わる方などを想定しています。半導体の開発・設計の未経験者の参加も大歓迎です。

図2 The GameでのSoC設計のハンズオンの様子


図2 The GameでのSoC設計のハンズオンの様子

 

The Gameは、日本アイ・ビー・エムが開発した、講義とハンズオンを繰り返しながら短期間で身につける、ゲーミフィケーションを応用したアプローチによる半導体/SoC設計に関する知識の習得プログラムです。2024年10月の同社発表から8カ月の間に、25の企業や大学、地方自治体や政府機関の方々に展開された実績があります。

このプログラムでは、講義で学んだSoC開発における要求開発・要件定義からアーキテクチャ開発までのプロセスに関する知識の理解を、専用カードを使ったハンズオンによる疑似体験を通じて深めます(図3)。ハンズオンでは5〜6名のチームを作り、役割分担しながら、高度なSoCを設計の流れを辿っていきます。SoC設計では、システム要件の定義を基点にして、段階的にさまざまなトレードオフを考慮しながら目的に合った最適解を探り出し、設計を詳細化していくことになります。そうした過程において、設計開始当初には想定していなかった不測の事態が発生することが多々あります。The Gameでは、こうした現実的状況への対処なども、体験できます。

図3 実際のSoC設計・製造フローとThe Gameでの講義・ハンズオンの対応


図3 実際のSoC設計・製造フローとThe Gameでの講義・ハンズオンの対応
出典:日本アイ・ビー・エム

 

チップ設計の未来を目指す学生が設計力を競う

SEMICON Japan 2025の会期2日目の12月18日(木)には、半導体設計の未来を担う学生を対象にした競技会「Circuit Design Speed Contest」を開催します(主催:SEMI Japan、後援:文部科学省)。有明工業高等専門学校 サーキットデザイン教育センター(CDEC)の協力のもと、全国の高専生が参加する、世界的にも類を見ないユニークな構成で実施します。会場は東京ビッグサイト、会議棟1階TechSTAGE YUZU。社会人の方も観覧可能です。
 

図4 半導体設計の未来を担う学生を対象にした競技会を開催


図4 半導体設計の未来を担う学生を対象にした競技会を開催

 

今回の競技内容は以下の2つ。

競技1は、複雑な課題に対して、学んだ知識を応用し、効率的に設計する力を養うことを目的とした「CIRCUIT DESIGNERタイムアタック(半導体・集積回路を仮想空間上で設計・製造)」です。有明高専がASKプロジェクトと共同開発したツール「CIRCUITDESIGNER」を使い、仮想空間上で回路の動きを視覚的に確認しながら試行錯誤を繰り返します。「タイム短縮」という明確な目標を目指すことで、学生の知的好奇心と競争心を刺激し、主体的な学びを後押しします。

競技2は、すべての回路設計の基礎となる知識の定着と、それを即座に引き出す「思考の瞬発力」を鍛える「インバーター回路設計スピードコンテスト」です。JEDAT社の統合回路設計システム「SX-Meister」を使い、時間的制約の中で、学んだ理論をいかに速く、正確にアウトプットできるかを競う回路設計競技となります。

日本には、製品に搭載する半導体チップを独自設計することで価値向上できるビジネスを営む企業が数多くあります。ところが現在、チップの設計人材の不足が懸念され、学術機関、政府機関がその教育に積極的に乗り出そうとしています。チップ設計に関連した知見とスキルのいち早い習得は、各社の競争力を確実に底上げすることでしょう。SEMICON Japan 2025は、チップ設計に着手したいと考える企業、設計力を身につけて自らのスキルセットを強化したいと考える方々を応援します。

Workforce Development


Workforce Development

SEMICON Japanでは業界の未来を担う学生、若手社員の方に
向けた様々なプログラムをご用意しています

詳細はこちら