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2025年12月4日(木)

計測・検査技術の専門サミット「MIS」を初開催、最先端チップの開発・量産の筋道を先導

株式会社エンライト 伊藤 元昭
 

AIの高度化とさらなる利用拡大に向けて、またサステナブルな社会の構築に向けて――。これまで以上に高度な半導体チップの開発と、その大量・安定的な生産が強く求められています。その実現には設計・プロセス・生産それぞれの技術開発の進化が欠かせません。ただし、実はそれらよりも早く真っ先に進化させておくべき技術があります。それが計測・検査技術です。

研究開発の分野の違いを問わず、新発見・新解釈・新技術・新発明といったイノベーションが、新たな計測・検査技術の登場によってもたらされた例は数え切れないほど存在します。ノーベル賞の授与対象となる研究テーマとして、新たな自然現象を捕捉・観測する計測・測定・分析技術が多数選ばれていることからも、その重要性がわかります。科学技術の粋を結集した最先端半導体チップの開発・製造においても同様のことが言えます(図1)。
 

Metrology & Inspection Summit


図1 計測・検査技術でイノベーション創出を促進するMetrology & Inspection Summit

 

最先端半導体の開発・量産の先導役「計測・検査」、その役割はさらに重く

最先端の半導体技術を開発する過程では、実に多様な計測・検査技術が利用されています。開発した成果を適切かつ正確に評価し、技術のブラッシュアップに向けた手がかりを知る手段として、計測・検査技術は欠かせません。2nmノードのチップを開発には、開発成果を正しく評価できる微細スケールで起きるわずかな現象を確実に検知できる技術が不可欠です。そして今、半導体技術で扱う物理・化学の現象のスケールは、ナノ領域から原子1つひとつの挙動が現れるオングストローム領域に突入しつつあります。

また、量産においても、従来とは利用シーンの異なる計測・検査技術が求められるようになりました。これまでの半導体の製造ラインにおいても、特定工程後のウエハーを対象にした抜き取り検査や、完成後のチップの検査などを実施することで厳格な品質管理を行ってきました。ところが、近年の先端チップの製造では、装置の状態やウエハーの状態の変動、ちょっとした条件のブレが、チップの性能や歩留りに大きく影響するようになりました。求める高性能チップを高歩留りで製造するためには、気温や原料の品質に応じて水分量や捏ね方を変える“蕎麦打ち名人”のような調整を、ウエハー単位もしくはチップ単位で加える必要が出てきています。このため、これまで以上に多様な工程で、より多くのインライン計測・検査技術を導入する必要が出てきています。

さらに直近では、AIをフル活用したデータ駆動型の技術開発と製造ラインの管理・制御が導入されるようにもなりました。高度なAIモデルを開発するためには、良質な学習データが大量に必要になります。これまで以上に多く、付加価値の高い情報を含むデータを収集する計測・検査手段が求められるようになるのは確実です。さらに、学習済のAIモデルを活用するシーンを拡大する際にも、推論対象となるデータを適切に収集できる計測・検査手段が必要になってきます。データ駆動型の開発と管理・制御では、計測・検査手段の質的向上と量的拡大を推し進めていくことになりそうです。

 

計測・検査のあり方と将来展望を議論する場「MIS」を新設

SEMIジャパンは、計測・検査にフォーカスしたサミット「MIS(Metrology & Inspection Summit)」を新設しました(図2)。パッケージング/チップレット技術に特化した「APCS(Advanced Package and Chiplet Summit)」、半導体設計に特化した「ADIS(Advanced Design Innovation Summit)」に続く、SEMICON Japan 2025(12月17日~19日、東京ビッグサイト)に併催する第3の専門サミットとなります。

図2 SEMICON Japan 2025の開催に併せて、計測・検査にフォーカスしたサミット「MIS(Metrology & Inspection Summit)」を新設

図2 SEMICON Japan 2025の開催に併せて、計測・検査にフォーカスしたサミット「MIS(Metrology & Inspection Summit)」を新設

 

SEMIジャパン 代表の浜島雅彦は、「これまで計測・検査技術は、半導体開発において極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、見過ごされがちな分野でした。2nmノードスケール以降の微細化を推し進めていく中、今後さらに精密な計測・検査技術の導入が求められてきます。また、チップレットのような開発成果や量産時の品質を確認するために新たな計測・検査技術が必要になる製造技術の導入も進んでいます。半導体技術がより先に進み、業界がより発展していくためには、計測・検査のさらなる技術的進化とビジネスとしての成長が欠かせません。この技術について、もっと多くの人に関心を持ってもらう必要性を感じていました。そこで、未来を切り拓くための重要な役割を担う計測・検査技術の発展と協調領域での課題解決推進に向けて集中的に議論するため、日本が世界に先駆けてMISという場を設けました」と、MISを新設した狙いを語っています。

 

半導体の開発・量産最前線での計測・検査技術の重要性を再認識

MISは、会期中 西ホール1に設置される革新的計測・検査ソリューションを紹介する展示エリア、2セッションで構成されるカンファレンス、ネットワーキングの場「GETTOGETHER」(12月18日開催)で構成されています。

SEMICON Japan 2025の会場には、国内外の222社の計測・検査関連企業が出展。そのうち、20社が西ホール1階のMetrology & Inspection展示エリア内に集結します。ウエハーや各種材料などの材料からマスクなどの製造部材、さらには半導体チップを対象にしたものまで、世界中から多種多様な最新計測・検査装置が一堂に会します。また、計測器やテスターそのものだけでなく、プローブカードやコネクター、光学部品などの計測・検査で活用する部材や治具、電源など計測・検査関連機器の製品も数多く展示されます。さらに、国内外の研究機関によって、最先端の計測・検査技術の研究成果が多数披露されます。

12月18日(木)午後に開催されるカンファレンス(参加無料)では、半導体の開発・量産での計測・検査技術の役割と動向を平易に解説するセッションと、最先端の半導体チップ開発での計測・検査ニーズに応える技術の最前線を解説するセッションを用意しています。同日午前には、最新半導体製造の国際シンポジウム「SEMIテクノロジーシンポジウム(STS)」の計測・検査セッション(有料)が開催される予定です。先端デバイス向け計測・検査技術の最新動向を解説するSTSとMISのカンファレンスの双方に参加できるようにスケジュールを構成しています。

MISの企画に携わった日立ハイテク ナノテクノロジーソリューション事業統括本部 シニアストラテジストの堀田尚二氏は、「MISでは、計測・検査の専門家や技術のヘビーユーザーだけでなく、より多くの方々にこの技術の重要性を理解していただけるような内容を目指しました。最先端チップでは、適切な製造条件であるプロセスウィンドウがますます狭くなってきており、正しい計測・検査技術を選択し、収集した情報を正確に解析することが、開発や量産の成果を大きく左右するようになりました。このため、より多くの業務に携わる方々が、自分ごととして最新の計測・検査技術について興味を持ってもらえたらと願ってMISを企画しました。また、計測・検査の領域が、学生の皆さんにとって魅力的な開発テーマであり、また将来の成長が期待できるビジネス領域であることを知ってもらい、多くの若い力が集うための後押しになればとも考えています」と述べています。

 

技術体系の把握から最先端技術の動向まで、広範な情報ニーズを網羅

会議棟7階 国際会議場 TheSUMMITでは、「Metrology & Inspectionの将来展望 未来を測る!デバイス・装置・アナリスト、第一線のエキスパートが集結」を開催します。このカンファレンスでは、一般、学生、マスコミなど幅広い層をターゲット(500人規模)にして半導体の開発と量産における計測・検査技術の重要性と動向を平易に説明します。

まず、Rapidus 常務執行役員の赤堀浩史氏が、最先端半導体チップの開発・量産に向けた計測・検査・分析技術の重要性とさらなる発展に向けた期待を語ります。歩留りの向上と維持管理に欠かせない技術を、求められる背景と共に解説します。また、日立ハイテク シニアフェローのByoung-Ho Lee氏が半導体の計測・検査技術の過去から現在、そして未来に至る技術の変遷を解説します。ここでは、AIの活用やデータ駆動型計測・検査手法など新たな潮流についても触れます。そして、TechInsights DirectorのBoris Metodiev氏は、製造ライン中で歩留りや信頼性などを管理するための計測・検査関連の2030年までの市場規模予想など、市場での潮流と将来展望を解説します。

会議棟605-606 TheSTAGE SAKURAでは、「Metrology & Inspection×産官学共同 2nmを越えて:日本の産官学協同研究開発最前線」を開催します。このカンファレンスでは、半導体業界の専門家や学生を対象(200人規模)にして、最先端のロジックやメモリーに適用される高度な技術の最新動向を解説。最前線で技術の研究開発を主導する日本の研究機関、大学および大学発スタートアップ企業の取り組みにフォーカスして紹介します。

理化学研究所 放射光科学研究センター 半導体プロジェクトリーダーの初井宇記氏が、世界を代表する大型放射光施設である「SPring-8」を活用した極めて高輝度なX線による非破壊X線解析技術の半導体開発への応用可能性を解説します。デバイス内部のナノ構造や歪みを可視化する技術です。また、フォトエレクトロンソウル 技術取締役の西谷智宏氏がGaN型半導体フォトカソードによる光電子ビームを利用した、非接触電気計測や深い穴の底部構造の高精度検出などへの応用展開を解説します。これまで計測困難だった構造・シーンでの高精度な計測を可能にする技術です。そして、東北大学 教授の黒田理人氏は、製造装置中にセンサーを組み込んで、2nm以降のゲートオールアラウンド構造(GAA構造)などの微細で複雑なデバイスの品質保証をするための技術を解説します。

MISは、多くの方々にとって、現代そして将来の半導体産業の中での計測・検査技術の重要性を再認識する機会になりそうです。計測・検査技術は、設計・プロセス・材料・生産・品質保証など、半導体のあらゆる領域の開発業務をより効果的に推し進めるための出発点です。将来のより優れた技術開発と量産に向けて、多くの気づきが得られる場となることでしょう。

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