2025年10月22日(水)
「AI✕サステナビリティ✕半導体」をテーマに開催するSEMICON Japan 2025
株式会社エンライト 伊藤 元昭
世界を代表するマイクロエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2025」が、2025年12月17日(水)~19日(金)に東京ビッグサイトで開催されます(図1)。今年のテーマは、「AI×サステナビリティ×半導体」です。
図1 さらに規模を拡大して開催されるSEMICON Japan 2025
人工知能(AI)の活用領域が急激に広がり、世界のあり様が大きく変貌しつつあります。その応用領域は、ビジネスから日々の生活、さらには教育・医療・行政・社会インフラ・安全保障にまで拡大。直近では生成AIへと進化したことで、長年変わらなかった仕事や暮らしでの価値観や進め方が再定義されるほどのインパクトをもたらしています。
その一方で、持続可能(サステナブル)な社会の構築に向けた取り組みのさらなる加速が求められるようにもなりました。社会の豊かさと成長のためならば、多少の環境破壊や資源の消費には目をつむるというのは許されなくなりました。AIがいくら有用でも、半導体がいかに重要な戦略物資であっても、その生産・活用によって地球環境に悪影響を及ぼさないことが大前提となります。
世界のメガトレンドであるAI活用領域の拡大とサステナブル社会の構築に向けた取り組みは、いずれも半導体の継続的な進化と供給増を大前提としている点で共通しています。半導体産業は2030年には150兆円規模へと急成長するとみられていますが、その背景には、AI活用の拡大とサステナブル社会の構築の加速があります。
SEMICON Japan 2025では、東展示棟4~6ホール、西・南展示棟、会議棟にて、昨年を上回る1,200を超える企業・団体が出展する予定です。会場を訪れるあらゆる業界・業種の来場者に、半導体製造工程の全域にわたる最新の技術・製品に触れ、出展者と直接コミュニケーションできる機会を提供します。
AIとサステナビリティとの関係を深める場と、検査・計測の注目度を高める場を新設
近年、SEMICON Japanでは、日本の半導体サプライチェーン全体の機能と活性度を全方位から底上げするために、半導体のウエハープロセス関連以外の領域における情報の発信と交換の場を逐次増やしてきました。2022年には半導体パッケージングおよび基盤実装分野のトッププレイヤーが集結する「Advanced Packaging and Chiplet Summit (APCS)」を、2024年には新世代の半導体設計と検証分野にフォーカスした新たなサミット「Advanced Design Innovation Summit(ADIS)」を設置。特に日本の半導体業界が、新たに強化・拡張していくべき領域での技術開発とビジネスの活性化を促す場として提供してきました。
そしてAPCSとADISを継続開催すると共に、今年のテーマでもあるAIとサステナビリティに関わるプレーヤーが集まるスペシャルサミット「AI x Sustainability x Semiconductor Summit」と、検査・計測に特化したサミット「Metrology and Inspection Summit(MIS)」の2つを新たに設置しました(図2)。
図2 AI✕サステナビリティ✕半導体と検査・計測に特化したサミットを新設
AI x Sustainability x Semiconductor Summitは、AIと半導体技術の革新による持続可能な未来の実現をテーマにした、エネルギー効率向上・排出削減・サステナブルなサプライチェーンなど、業界の最先端課題への取り組みを議論する場です。西展示棟1階 西アトリウムで開催します(図3)。
技術のテーマとしてのAIとサステナビリティは、個別に取り組むのではなく、相互連携・補完しながら同時に進化・改善していくべきテーマです。例えば、AI活用に不可欠なデータセンターを単純に高性能化・増設していけば電力消費が増大してしまいます。対策を施さないとAI活用は持続可能とは言えなくなってしまうのです。また、社会活動の中に潜む無駄をキメ細かく見える化・最適化し、省電力化・省資源化・省人化していくためには、AIを駆使した管理システムの活用が不可欠になります。工程の高度化・複雑化が進む半導体の製造ラインにおいても同様の課題が顕在化しており、ラインの高度化と増産は、AIを活用した無駄の排除や工程の最適化が大前提になります。
AI x Sustainability x Semiconductor Summit では、「AI技術とエネルギー効率」「エネルギー効率の向上」「排出削減」「半導体製造の技術革新」「サステナブルなサプライチェーン」の5つのスコープから、このテーマでの最新情報を提供し、議論を促します。さらに、テーマに合致した具体的ソリューションとして、AI制御によって、ガス供給の最適化やCO₂排出削減などを実現する「AIR WATER NEO MIX STAND」を展示。特別展示エリアにおいても、半導体業界のキープレイヤーやグローバル企業が注目する持続可能な未来に向けた最新の環境ソリューションやデモンストレーションを披露します。
一方、MISは、重要性が高まり、難易度が増す検査・計測技術にフォーカスし、この分野での協調領域での課題解決に取り組む方々が議論する場です。AIの進化を後押しするチップ性能の向上を推し進めるためには、微細化やチップレットなどの集積技術のさらに進化を支える検査・計測技術の高度化が欠かせません。しかし、製造装置や材料に比べて、役割の大きさの割には、この分野への注目度が低いのが現状でした。MISは、検査・計測技術のさらなる進化と効果的活用を促し、半導体製造技術の進化を円滑化・加速させることを目指しています。
MISでは、西展示棟の1ホールにおいて、検査・計測機器メーカーなどによる最新技術の展示を行います。このほか、デバイスメーカーや検査装置メーカーなどが最新の計測技術と今後の課題、進化の方向性などを語る講演セッション「Metrology & Inspectionの将来展望 未来を測る!デバイス・装置・アナリスト、第一線のエキスパートが集結」を12月18日に会議棟7階国際会議場のTechSUMMITで、「Metrology & Inspection x 産学協同 2nmを越えて: 日本の産学協同研究開発最前線」を12月18日会議棟605-606のTechSTAGE SAKURAでそれぞれ開催します。
図3 SEMICON Japan 2025のフロアマップ
設計・検証分野にフォーカスした新たな情報発信の場を新設
毎年、多くの聴講者を集めるSEMICON Japanの講演とセミナーですが、今回も魅力的な70以上のセッションが用意されています。前回を超える300人以上の業界リーダーや専門家が講師として登壇。世界の半導体サプライチェーン産業の最新技術と市場動向について語ります(図4)。世界と日本の半導体産業の今を知る絶好の機会となることでしょう。それらの中から、特に注目したい講演・セミナーをいくつか紹介します。
図4 70以上のセッション、300人以上の講師が登壇する充実した講演・セミナー
まず、会期初日の12月17日には、西4ホールのSuperTHEATERにて、「グローバルエグゼクティブサミット」が開催されます。ここでは、AI技術の進化やサステナブル社会への移行を後押ししていく、半導体産業が具現化していくべきイノベーション創出の最前線の状況を、戦略・施策を指揮するグローバルリーダーが掘り下げて解説します。
本サミットの講演の中から2つ概要を紹介します。まず、imec Senior Vice PresidentのSteven Scheer氏は、計算効率の向上、電力供給、熱管理、メモリー帯域幅に焦点を当て、性能・電力・コストを軸に効率的に拡張可能なAI向けコンピューティング・システムの技術的課題を克服する新たな戦略について語ります。そして、トランジスタレベルの改善を超えたシステムレベルでのスケーリングを拡張する実践的道筋を提示します。また、Micron Technology Executive Vice PresidentのScott DeBoer氏は、AIの進化に伴ってさらなる高度化が求められるメモリーにおいて、帯域幅、レイテンシ、電力効率を一層改善していくための技術的方策を提示します。
同日12月17日には、SuperTHEATERにて、近未来の半導体技術開発の課題とその解決に向けた筋道について集中的に論じる「次世代半導体技術 未来を造る半導体革命」が、デバイス編と装置材料編の2セッションに分けて開催されます。ここには、AI、高性能コンピューティング(HPC)、データセンター、自動運転などの応用に向けた最先端のメモリー、ロジック、AIチップの開発をリードするグローバル企業のリーダーが登壇。先端プロセス、アーキテクチャ革新、新たな応用領域に向けた挑戦などについて、それぞれの視点から開発最前線での取り組みを語ります。
それぞれのセッションの講演の中から3つ概要を紹介します。デバイス編では、IBM General ManagerのMukesh Khare氏が、持続可能な生成AIおよびHPCアプリケーションの進化を目指して同社が推し進める、半導体での技術革新とエコシステム構築の取り組みを紹介します。装置材料編では、JX金属 取締役副社長執行役員の菅原静郎氏が、生成AIの進化と活用に伴って顕在化する技術課題や社会課題を解決するための材料開発とサプライチェーン強化の動向を解説。また、ディスコ 取締役 代表執行役副社長 営業本部長の吉永 晃氏が、AI時代の半導体パッケージで求められるグラインディングやダイシング工程での革新的技術開発と自動化への取り組みを紹介します。
会期2日目の18日のSuperTHEATERでは、AIの進化や活用とサステナブル社会の構築に関する動向を多面的切り口から掘り下げる講演が数多く開催されます。
「AI最前線 技術革新が切り開く新時代」では、AIの現状と将来展望、さらには日本がこの領域で果たすべき役割ついて、東京大学 教授の松尾 豊氏やさくらインターネット 代表取締役の田中邦裕氏などがそれぞれの視点から議論します。「生成AI 無限の創造と可能性」では、Tenstorrent CEOのJim Keller氏などが、生成AIの社会的・産業的インパクトに迫り、その可能性と課題、未来展望を語ります。また、「Advanced Packaging Chiplet Summit 2025 未来をつなぐチップレット:光・車・AIが描くサステナブル社会」では、近い将来のデータセンター向けサーバーへの導入が想定されている光電融合技術の開発をリードするNTTグループからNTTドコモビジネス代表取締役副社長の工藤晶子氏や、ハイパースケーラーであるAWS Vice President of TechnologyのBabak Sabi氏などが登壇。後工程技術での技術革新の行方や応用側からのニーズについて述べます。
最終日19日は、日本の半導体産業再興をテーマにして、集中的に議論します。
「世界に貢献する日本の先端半導体戦略 日本半導体産業の発展にむけてーステップ1-2-3とそのさきを語る」と題したセッションでは、「半導体・デジタル産業戦略」の進捗を検証し、政策の方向性や産業界への影響を、Japan Advanced Semiconductor Manufacturing 取締役社長の堀田祐一氏とRapidus代表取締役社長 兼 CEOの小池淳義氏、NTT IOWN総合イノベーションセンタ センタ長の塚野英博氏などが議論します。
さらに、「グランドフィナーレ 半導体サプライチェーンの未来:グリーン化と持続可能性への挑戦」では、Applied Materials President and CEOのGary Dickersonや東京エレクトロン 代表取締役・CEOの河合利樹氏などが登壇。グリーン化と持続可能性の維持という、半導体産業が挑む新たなテーマを軸にして、業界が抱える課題と新たな挑戦によって生まれる可能性を探り、次世代に向けたビジョンを提示します。
次世代を担うZ世代の若手の獲得・育成を支援
半導体産業の再興が進められている中、次世代を担う若い人材の育成が、最優先で取り組むべき課題となっています。
最先端のチップを開発し、競争力の高い製造ラインを構築するためには、電子工学や化学、材料科学、機械技術、制御など、これまでの半導体産業で求められてきた専門人材だけでなく、AIやデータサイエンスといった新たな専門性を持つ人材も求められるようになりました。ところが、そもそも日本では少子化が進んで人材の母数が減少している中で、あらゆる業界の企業での業務がデジタル化・スマート化したことで、製造業内のみならず、金融や商社など他業種との間で優秀な人材を奪い合う状況が生じるようになりました。
次世代を託す人材を獲得・育成するためには、既に半導体業界に身を投じてくれた貴重な若手人材を確実に育成するとともに、学生に業界の魅力をアピールして継続的に獲得していくための機会を増やす必要が出てきています。SEMICON Japan 2025では、人材の獲得と育成を支援するため、特にZ世代の若手を対象にした多様なプログラムを用意しています(図5)。
図5 Z世代の若手をターゲットとした人材の獲得と育成を支援するプログラムを多数用意
まず、今回からの新企画として、学生と若手が交流する場「THURSDAY WAKAMONO NIGHT」を12月18日に開催します。若手の価値観、視点で、半導体産業の魅力を学生に語る場です。また、例年開催していたプログラムも、強化・継続して実施します。半導体関連企業58社が参加して、その魅力をアピールする半導体業界研究イベント「未来COLLEGE」、高専生の若いアイディアを具現化した技術や研究成果を展示する「The高専」、大学や高専の半導体関連研究室のよる研究成果の発表展示「アカデミア」と審査員が審査・表彰する「アカデミアAward」、さらには現代の職場に不可欠な多様性・公平性・包括性に関するパネルディスカッション「Women in Business」などを開催します。
さらに、インフルエンサーをゲストとして迎えたスペシャルイベントを通じて、若手の心に響く観点や気づきを提供します。ものづくり太郎氏は、ロボット産業と半導体の関わりについて語り、気鋭の経済学者である成田悠輔氏がAI活用などによって働き方が激変する中で生きる若者と直接対話し、未来の社会と働き方について議論します。
SEMICON Japan 2025は、日本の半導体産業が進むべき道を指し示すと共に、半導体産業に関連する一人ひとりが抱える課題を解決し、目指す目標を実現するためのヒントを得るための絶好の機会を提供します。実際に会場へと足を運び、会場の展示を見て、講演やセミナーを聴講し、出展者や講演者との対話を通すことで、半導体業界が進化・発展していく鼓動を肌で感じることができるでしょう。