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2023年11月15日(水)

先端半導体量産を見据えた技術情報の収集を支援するSTS 2023

株式会社エンライト 伊藤 元昭

 

日本における半導体ビジネスが、今、大きく変化しつつあります。これまで半導体産業の日本企業は、最先端の製造装置と材料を世界に向けて開発・供給するサプライヤとしての役割が中心でした。これからは、自国内でも最先端のロジックチップを継続的に製造していく役割が強化されていく見込みです。

現在、日本政府主導の下で、最先端半導体チップを製造する産業の再興を目指す取り組みが進められています。2nm以降の最先端ロジックチップの受託生産サービスを提供する体制を立ち上げるべくRapidus(ラピダス)が始動しました。それに先駆けて熊本に工場を建設している台湾TSMCの日本での生産子会社であるJASMは、早くも第2工場の建設を計画しています。さらにはSBIホールディングスと台湾PSMCが、宮城県での半導体新工場の建設を発表しました。

ただし、日本では、最先端ロジックチップの開発・量産に関する知見や技術の蓄積は、約20年間にわたって途絶えた状態にありました。その間にも、台湾や米国などでは、継続的かつ劇的に技術が進歩しています。現時点での最先端の開発・量産の現場では、1990年代までに日本の半導体産業が扱っていたものとは全く異質な知見や技術が使われていると言えるでしょう(図1)。その典型が、日本企業が使い手となって量産現場に適用した経験がない極端紫外線(EUV)露光だと言えます。今、日本の半導体産業を担う人材には、失われた20年間を埋める、最先端ロジックチップを量産するために必要な知識とスキルの取得が求められています。
 

図1


図1 最先端ロジックチップと製造ライン 
出所:TSMC

 

最先端半導体技術の使い手視点からの情報ニーズに応えるプログラム編成

2023年12月13日~15日に東京ビッグサイトにて開催される「SEMICON Japan 2023」では、最新半導体製造の国際シンポジウム「SEMIテクノロジーシンポジウム(STS)」が、会期中の3日間、会場内の東8ホールおよびZoomのライブ配信で開催されます(参加費 SEMI会員 10,000円(税別)、一般20,000円(税別)  ※講演資料ダウンロード付き。学生は無料)(図2)。
 

図2


図2 昨年のSTSセッションの様子

 

1982年に創設されて以来、今回で42回目を迎えるSTSは、SEMICON Japan最大規模のフラッグシップカンファレンスです。その時々の最もホットな話題を集め、半導体デバイスの開発・製造に関わる多様な技術分野それぞれの最新動向を網羅。各分野の第一線で活躍する国内外の技術者や有識者が技術動向、実用化の動き、市場の見通しなどを語ります。

STS 2023 プログラム委員長を務めるソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の岩元勇人氏は今回のSTSのプログラム編成の趣旨について、「最先端のロジックチップの量産体制を国内に整えるため、日本の半導体産業のエンジニアや経営者には、最先端の製造技術に関するより網羅的、包括的、体系的な知見の取得が求められています。製造装置や材料のビジネスでは、特定領域での高い専門性が何より重要でした。しかし、最先端技術の使い手となって量産技術を実現するためには、専門性の高い多くの要素技術を組み合わせ、相互の関係を念頭に置きながら、技術開発を進めていく必要があります。今回のSTSでは、最先端量産プロセスを構成する個別の要素技術を深めるだけでなく、技術の使い手としての視点からのニーズに応えた情報提供のためのプログラムを編成しました」と語っています。

今回のSTSは、9セッション、30講演とセッションと講演の数を昨年よりも拡大して開催されます(図3)。さらに、各セッションに割く時間も昨年までの90分から120分へと延長。広く、深い知識の確実な取得を支援する構成となりました。用意されたセッションの内訳は、「先端デバイス・プロセス」「先端材料・分析」「先端リソグラフィ」「フォトマスク(新設)」「パワーデバイス」「SMARTセンシング/MEMSデバイス」「パッケージング」「テスト」「特別セッションーメタバース」です。
 

図3


図3 STS2023の開催スケジュール

 

EUV露光の今と将来からパワー半導体、センサーでの技術革新まで

今回のSTSのセッションの中で、特に内容の刷新と充実が図られたのが、先端リソグラフィとフォトマスクです。話題をEUV露光にフォーカスし、EUV露光に関する包括的な最新動向から、量産適用を見据えた課題と、それを解決するためのキーテクノロジーまでを網羅しています。

先端リソグラフィのセッションでは、オランダASMLとの協業でEUV露光技術の研究開発をリードし続けているベルギーimecのトップエンジニア、 Geert Vandenberghe氏が登壇。EUV露光の最新動向と将来に向けた展望を語ります。さらには、これまで日本で最新情報が語られる機会が乏しかったEUV露光向けドライレジスト技術について、米Lam ResearchのBenjamin Eynon氏が解説します。フォトマスクのセッションでは、EUV露光導入時の課題のひとつだったペリクルの耐久性を高める新材料の開発状況ついてリンテックオブアメリカの近藤 健氏が語ります。

先端デバイス・プロセスのセッションでは、東京工業大学の若林 整教授が、IEDMなど学会発表の動きなどを基に、将来のトランジスタ構造やプロセスについて展望。さらに広帯域メモリー(HBM)でのスケーリングの課題をマイクロンメモリジャパンの横井直樹氏が、組み込み用マイコンでのAI処理の高効率化に向けた技術開発の動きについてルネサスエレクトロニクスの野瀬浩一氏が解説します。一方、先端・材料分析のセッションでは、最先端チップ製造の歩留まり向上を阻む課題である純水や薬液中の微小汚染粒子をインラインで計測する技術についてキオクシアの冨田 寛氏が、放射光施設「SPring-8」の利用枠割当を半導体産業向けに確保することで微細デバイス構造の動作メカニズムや不良解析を支援する体制の構築について理化学研究所の初井宇記氏が説明します。

パワーデバイスセッションでは、パワー半導体メーカーの世界のトップ2が、日本ではあまり語られてこなかった領域での話題について講演します。パワー半導体は、世界シェアのトップ10に日本企業が5社食い込んでおり、デジタル系のロジックチップとは異なる状況です。しかし直近では、世界的な脱炭素化の潮流の中でパワー半導体の重要性が急激に高まり、海外勢が積極的に攻め、日本勢が守る構図となっています。

今回のSTSでは、パワー半導体のトップメーカーであるドイツInfineon TechnologiesのHans-Oliver Joachim氏が登壇。同社におけるGaNベースのパワー半導体開発について講演します。これまで同社は、SiCベースに関しては多くの情報を明らかにしていますが、GaNベースに関しての戦略が聞ける稀有な機会になります。また、SiCデバイスのトップメーカーであるスイスSTMicroelectronicsで車載半導体の研究開発部門を率いるSalvatore Coffa氏が、米Teslaの量産車への採用で話題になった同社のSiCデバイスについて足元の動きと展望を解説します。その他にも、デンソーの志賀智英氏が、SiベースのIGBTを中心とした足元での電動車向けパワー半導体の技術開発の動きを紹介します。

Smartセンシング/MEMSデバイスセッションでは、新たな潮流として顕在化してきている、オープンなチップ開発環境を利用したセンサーやアナログICなどの開発の効率化/自動化に関する講演が用意されています。センサーやアナログICは、現実世界と仮想世界をつなぐインタフェースして、その重要性が高まる一方です。ただし、開発すべきチップの多品種化が進みやすく、開発効率の向上が困難な分野となっています。今回のSTSでは、米GoogleのJohan Euphrosine氏が同社の推進する無償でのオープンソースのチップ設計・製造プログラムについて、米University of MichiganのMehdi Saligane氏が同大学主導で進められているオープンソースのアナログICの自動設計環境「OpenFASOC」を利用したセンサー開発について解説します。

 

講師やSTSプログラム委員と直接議論する場も用意

STSでは、各セッションにオーサーズインタビューの時間を設けています。ここでは、普段の技術開発の中では知ることができない、担当分野外の専門家の意見を聞くことができるかもしれません。
 

図4


図4 昨年のSTS GETOGETHERの様子

 

また、14日と15日のセッション終了後には、聴講者同士も交流できる立食イベント「GETOGETHER」も用意しています。講演後の講師やSTSプログラム委員なども参加し、14日はリソグラフィとフォトマスクを、15日は先端材料分析と先端デバイス・プロセスをテーマに議論する場となります。GETOGETHERには、STSの聴講者以外も参加することが可能です。分野の枠を超えた人的ネットワークを構築するための絶好の機会となることでしょう。

SEMICON Japan / APCS 2023 に参加する

STS

SEMIテクノロジーシンポジウム(STS)

日時:2023年12月13日(水)- 15日(金)
会場:東京ビッグサイト 東8ホール PremiumCLASS A および オンライン(Zoom)
形式:ハイブリッド開催 ※対面またはオンライン参加
参加費:SEMI会員 11,000円(税込)一般 22,000円(税込)※1セッションにつき
講演資料ダウンロード/ Zoom視聴URL付き