2022年11月24日(木)
EUV露光の適用範囲の拡大で、止まらない微細加工技術の進化
株式会社エンライト 伊藤 元昭
この世の中には、いつか起きることは確実ではあるが、起きる時期がはっきりせず、対応や対策が後回しになりがちなことがいくつかあります。地震など自然災害は、その代表的なものでしょう。そして、半導体業界においては、「ムーアの法則の終焉」がそれに当たると言えると言えます。仮に、ムーアの法則が終焉してしまったら・・・。IT業界や自動車業界など、半導体を活用して将来の商品やサービスを構想している多くの業界は、例外なくその進歩・成長が止まってしまうことでしょう。
ただし、自然災害の発生とムーアの法則の終焉では、大きく異なる点が1つあります。基本的に自然災害は発生自体を私たち自身の手で防止できないのに対し、ムーアの法則は研究者やエンジニアの努力と知恵で延命できることです。
ムーアの法則は、遠からず終焉を迎えるのではないかという話は、20世紀中から多く語られていました。しかし、20年以上経った今も終焉していませんし、今後しばらく継続できることが確実視されています。もちろん、ムーアの法則の定義が徐々に変わっていることからもわかるように、20世紀中に心配していったことがすべて起きていないわけではありません。しかし、微細加工技術の進歩とそれに伴うチップの集積度や性能は、着実に向上し続けています。
もちろん、後工程技術の進歩による3次元化といった、ムーアの法則の鈍化や終焉に備える対処技術を準備していくことはとても重要です。ただ、同時に性能・消費電力・コストパフォーマンスなどに多大なるメリットがある微細加工技術の進歩に向けた取り組みが緩むことはありません。
imecが示す2036年までの半導体プロセスのロードマップ
ベルギーの独立系先端半導体機関であるimecは、2022年5月、ロジックチップ製造に適用する半導体プロセスの最新ロードマップを公表しました(図1)。ここには、2036年には2Å(オングストローム、2Åは0.2nm)まで微細化し、ムーアの法則が継続できるという見通しが示されています。
図1 imecが示すロジックチップの最新プロセス・ロードマップ
出所:imec
imecは、集積度に大きく影響するチップ上の配線ピッチについては、2030年以降微細化がむずかしくなるとしています。ただし、近年複雑化する方法へと進化してきたトランジスタ構造の3次元化がさらに高度なものへと進化させることで、性能などを向上させることができるロードマップが描けるということのようです。
IT産業や自動車産業はじめ、あらゆる業界・業種が、半導体のさらなる進化をあてにしてDXやGXを推し進めています。半導体の進化の方向性を指し示すロードマップに沿った技術開発や事業展開は、半導体業界にとっての責務であると言えるでしょう。
米Intel CEOのPat Gelsinger氏は、「現在のパッケージ当たりのトランジスタ数は約1000億個ですが、10年後には1兆個に達します」という見通しを語っています。同社は、微細加工技術の進歩と、チップレットなどをはじめとするより高度な2.5D/3D実装技術の導入を組み合わせて、こうした劇的な高集積化を実現するようです。
Gelsinger氏は、この目標を実現するために必要な技術として、「RibbonFET(IntelでのGAA(Gate-All-Around)構造FETの呼称)」「PowerVia(バックサイドからの新たな電力供給技術)」「高NA(開口数)EUV(極端紫外線)露光」の3つを挙げています。このうち高NA EUV露光は、オランダのASMLの技術開発が不可欠な、その進捗が外部要因に左右されるものになります。微細加工技術の進歩が、ASMLの技術開発の進捗に依存している点では、台湾TSMLや韓国Samsung Electronicsも同様であり、半導体戦略で示すシナリオに沿って最先端半導体プロセスの開発・事業化へのキャッチアップを目指す日本企業も例外ではありません。
高NA EUV露光装置の市場投入で、2025年微細化が加速か
EUV露光は、装置の価格が高価なこと、光源出力の向上が難しくスループットを高めることが難しいこと、メンテナンスが難しいことから、現時点では、チップ上のパターンの中から適用先を要所に絞り込む必要があります。
最先端微細加工技術のチップ量産への適用をリードするTSMCなどは、より高出力でより微細な露光に適用できる装置を逐次導入しながらEVU露光の適用範囲を広げることで、段階的に集積度や性能の向上を図っています。同社は、2019年、最初にEUV露光を量産適用した「N7+」プロセスでは孔パターンだけに適用していました。これが、2020年に投入したいわゆる“5nmプロセスノード”「N5」では配線層に、2022年に投入したいわゆる“3nmプロセスノード”「N3」ではさらに適用分野を拡大しています。
Intelが語るように、EUV露光装置自体の進化も欠かせません。現在、ASMLは、NAが0.33のEUV露光装置「NXEシリーズ」を供給しています。Intelなどが求める高NA EUV露光装置とは、より大型のレンズを採用してNAを0.55に高めた次世代機「EXEシリーズ」になります。同社は、試作機である「EXE:5000」を2023年にASML社内で稼働させ、その試作機を2024年に半導体メーカーに導入。そして2025年には、本格的な量産適用機「EXE:5200B」を市場投入する予定です(図2)。
図2 ASMLの高NA EUV露光装置のロードマップ
出所:AMSL Japan
微細加工技術の進歩とそれに伴うチップ上のトランジスタや配線の微細化・高性能化を推し進めていくためには、デバイスメーカー、装置メーカー、材料メーカーの連携が不可欠です。露光装置以外にも、3D化を推し進めた素子構造を形成するための装置、新たな配線材料などの同時並行的な進化が求められています。
「SEMICON Japan 2022」では、こうした近い将来に量産適用される微細加工技術を支えるさまざまな装置・材料が出展する予定です。また、会場 会議棟607+608で開催するSEMIテクノロジーシンポジウム(STS)では、2022年12月15日に「STS先端デバイス・プロセス セッション 先端デバイスの現状と将来の展望」を、12月16日に「STS先端リソグラフィセッション EUVおよび新規リソグラフィ技術の最新動向」を用意してします。さらに、Tech&Bizの枠で12月16日に「フォトマスクセミナー(PMJ協賛)フォトマスクの現状と最新技術動向」を開催します。これらのセッションに参加することで、微細加工技術に関する最新情報を網羅的に収集することができます。
関連プログラム
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STS先端デバイス・プロセス セッション
先端デバイスの現状と将来の展望
STS 先端リソグラフィセッション
EUVおよび新規リソグラフィ技術の最新動向
日時:12月15日(木)・16日(金)15:00 - 16:30
会場:東京ビッグサイト 会議棟607+608 および オンライン(Zoom)
参加費:
1セッションにつき
SEMI会員 6,600円(税込)※12月9日(金)までの事前予約割引価格、以降は一般価格
一般 13,200円(税込)
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フォトマスクセミナー(PMJ協賛)
フォトマスクの現状と最新技術動向
日時:12月16日(金)12:30 - 14:00
会場:東京ビッグサイト 会議棟607+608
参加費:無料