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2023年1月25日(水)

SEMICON Japan 2022 オープニングキーノート/グランドフィナーレ レビュー

日本の半導体産業の再興、構想段階からいよいよ実践段階へ

株式会社エンライト 伊藤 元昭

 

日本での半導体産業再興に向けた取り組みに大きな注目が集まる中、2022年12月14日から16日に掛けて、東京ビッグサイトで「SEMICON Japan 2022」が開催されました。開会式に岸田文雄首相が駆け付け、「攻めの国内投資拡大を支援していく」と政府の決意を力強く述べるなど、時代が大きく動き出し始めていることを誰もが感じる今回のSEMICONとなりました(図1)。
 

岸田総理


図1 SEMICON Japan 2022の開会式で、半導体産業再興に向けた期待を語る岸田文雄首相

 

グローバル連携を前提とした日本の半導体産業再興

会期初日、開会式に続いてSuperTHEATERで開催された「オープニングキーノートパネル グローバルリーダーを目指す産官学戦略」では、日本政府が掲げる「半導体・デジタル産業戦略(以降、半導体戦略)」の起案に尽力し、引き続きその実践にも携わるキーパーソンたちが一堂に会しました(図2)。そして、それぞれの役割と見地から、今、半導体産業で日本が再び世界をリードすることの意義、必然性について改めて強調。その実現に向けた課題と、解決に向けた方策について議論しました。
 

オープニングキーノート


図2 オープニングキーノートパネルの様子

 

半導体戦略推進議員連盟 会長として半導体政策を指揮する衆議院議員の甘利明氏は、半導体チップの製造では、微細加工技術のみならず、チップレットや3次元実装での技術開発競争の重要性が高まっていることを指摘。これからの世界の半導体業界では「競争のスタートラインが引き直されます。このタイミングを絶対に逃すわけにはいきません。また、時を同じくして、自動運転や量子コンピューティングなど次世代技術の社会実装が2030年前後に始まります。その時に、それらの社会実装を支える先端半導体を日本で製造できるかが日本経済の未来にとって極めて重要なのです。だから、今、半導体産業を再興すべきなのです」と日本で半導体産業を立ち上げる戦略的意義を語りました。

さらに甘利氏は、「日本国内の力だけで行おうとしていた過去の失敗に学ぶ必要があります。これからは、各国や地域がそれぞれの強みを出し合い、相互補完しながら連携していくことが重要なのです」とも述べました。日本での半導体産業の再興は、国益を最優先に考えた国策です。しかし、残念ながら、最先端技術でのチップ製造には長いブランクがある現在の日本には、独力で最先端の半導体産業を立ち上げる力はありません。そもそも、世界も、日本が半導体のガラパゴスを生み出すことを望んでいません。甘利氏の発言からは、その点を真摯に受け止めた政府の本気を感じた聴講者が多かったことでしょう。

 

最先端半導体の領域での競争力を持続可能にするために

経済産業省は、2022年11月に、次世代半導体の研究に向けて国内外の英知を結集するための新しい研究開発組織「技術研究組合最先端半導体技術センター(Leading-edge Semiconductor Technology Center:LSTC)」の設立を明言しました。主要な国研や大学を束ねて組織として効果的かつ効率的な研究活動を行い、さらにはベルギーのimecや米国立半導体技術センター(NSTC)、米IBMなど海外の研究機関・企業との連携の窓口となる組織です。国内での最先端技術による量産製造拠点であるRapidusから必要な開発事項を吸い上げ、技術の研究開発を企画・実施し、成果をRapidusの量産製造ラインに移管して事業化する役割を担います。

LSTC理事長 兼 Rapidus取締役会長として半導体戦略の実行者となる東哲郎氏は、2nm世代以降の技術でチップを製造するファウンドリであるRapidusを「10年、20年と利用し続けられる会社にしていきます。世界の最先端を行く日本の製造装置メーカー、材料メーカーの力を借りれば、現状でも、最先端チップの製造がたやすいように見えるかもしれません。しかし、今や最先端半導体の技術開発は、グローバル規模で多様な才能を持つ人材が共創・競争しながらイノベーションを生み出す領域となりました。RapidusとLSTCの成否は、グローバル連携にかかっています」と強調しています。

世界も、半導体産業への日本の貢献拡大に期待しています。米IBM Senior Vice PresidentのDarío Gil氏は、「社会課題の解決のためには、テクノロジーが必要であり、そのテクノロジーの限界を突破するためには国境を越えた連携が必要です」と国の枠を超えてアイデアや知見・スキルを出し合い共創・役割分担していくことによるイノベーション創出の重要性を強調。特に、「日本には半導体製造装置や材料などの分野の強みを生かしたグローバル連携を期待している」としました。

産官学が連携するプロジェクト体制の中で、アカデミアの立場から支援する役割を担う理化学研究所 理事長の五神真氏は、少し違った角度から持続可能な競争力の醸成に必要な要素を語りました。同氏は、「短期的な成果だけでなく、長期的に競争力を維持するためには、人材育成が欠かせません。特に、若い世代や子どもたちが、半導体に夢を感じるような状態にすることが重要だと考えます。プロジェクトに携わる私たちが、長期のビジョンを明確に示すことが極めて大切なのです」と語りました。

半導体産業再興の最後のチャンスに挑むRapidus 代表取締役社長の小池淳義氏は、「半導体人材には、日本国内はもちろんのこと、世界中からどんどん集まってきてほしいと考えています。国内には優れた研究者はたくさんいるのですが、技術力を産業競争力につなげるためには、ビジネスマインドを養うシステムが必要になることでしょう。強いビジネスを生み出し、育てるために何をしたらよいのか。考えて、具現化できる人材を育成していくことが求められます」と述べました。

 

大事を為すには、必ず人を以って本と為す

日本政府が掲げる半導体戦略では、ステップ1として、半導体不足など足元の課題解決に取り組むべく、台湾TSMCの誘致と新工場の建設を推し進めてきました。そして、その取り組みは具体的な成果として実り、TSMCが誘致された九州地区は半導体チップの生産拠点、サプライチェーン、さらには人材が集中する日本の半導体産業の一大拠点となりつつあります。会期最終日である12月16日に開催された「グランドフィナーレパネル 日本半導体の躍進を支えるサプライチェーン/人材戦略」には、九州地区でそれぞれの役割・立場から半導体ビジネスの強化に取り組む企業のキーパーソンたちが集結(図3)。九州地区における直近の課題である、人材集めと育成のあるべき姿などについて議論しました。
 

2022 グランドフィナーレパネル


図3 グランドフィナーレパネルの様子

 

世界中の多くの国や地域の人々は、半導体産業を、典型的な成長産業だとみなしています。このため、黙っていても、優秀な人材が集まる状況にあります。ところが日本は、絶頂から凋落していった過去が人々の記憶にこびりついており、いまだに斜陽産業の代表と考える人が多くいる稀有な国となっています。このため実際には、これだけ巨大な産業で、技術革新も止まっていないにもかかわらず、人材が集まりにくいのが現状です。

ただし、こと九州地区に関しては、風向きが大きく変わっているようです。九州工業大学 マイクロ化総合技術センター センター長・教授の中村和之氏は、「直近まで、大学では、学科名に電子や電気をつけていると学生が集まらない状況でした。ところが、状況はガラリと変わってきています。選択科目である電子工学の講義に、もう単位がそろっているはずの4年生の学生が集まるようになりました。九州の中に、最先端の技術開発に携われる職場がたくさんできてきて、学生の目には魅力的に映っているようです。教員を公募するサイトでも、半導体に関連した教員の公募件数がかなりの数見られます。さらに、熊本大学で、50年ぶりの新学部である「半導体学部」を創設するまでになりました。九州は大変な盛り上がりです」という。人は風評で動くところがあります。学生やその親などが魅力を感じる企業が現れ、産業の将来性を周知できれば、確実に人材は集まることを、九州の状況変化が示しています。

その一方で、現在、半導体業界が求める人材像は、1990年代までの日本の半導体産業の全盛期とは大きく変わっているようです。ソニーグループ 上席事業役員 ソニーセミコンダクタソリューションズ 代表取締役社長 兼 CEOの清水照士氏は、「現在、当社の製品の利用法が、『イメージング』から『センシング』へと重心を映しつつあります。このため、AIや数学など、半導体とは別の知見を持つ人材が必要になってきています。現在、採用する学生の専門のうち、電気電子工学は12%にすぎません。半導体ビジネスをさらに拡大するため、採用時の母集団を増やす意味からも、数学や生物など他学科から積極的に採用しています」と言います。

さまざまな分野から優秀な人材を集め、育成し、維持するためには、人材をどのように遇するかも重要になります。TSMCジャパン 代表取締役社長の小野寺誠氏は、台湾での人材活用の取り組みを紹介しました。「TSMCは、5割を超える社員が博士号もしくは修士号を取得しています。もちろん、それに見合う形で報酬も高く設定し、常に業界内でトップ1/4に必ず入る水準を維持するよう努めています。さらに大学で開発したチップの試作を請け負うなど、大学との結びつきを強め、即戦力の人材を学生時代から育成する取り組みも進めています」と言います。

海外に多くの拠点を置き、人材のグローバル化が進んでいる東京エレクトロンでは、「当社では、社員のやる気なしに成長なしと考えています。個々の社員が『自分の仕事の社会的価値』『将来に対する自分と会社の夢と期待』『チャレンジできる機会』『成果に対する公明な評価』『グローバル視点からも競争力のある報酬』を明確に意識できる状態にするよう努めています」(同社 SPE事業本部 コーポレートオフィサー・専務執行役員・SPE事業本部長の三田野好伸氏)と語っています。

人材の待遇と会社の業績は、ニワトリとたまごの関係にあると言えるでしょう。しかし、人材の待遇が良すぎて傾いた会社の数より、待遇が悪くて傾いた会社の数の方がはるかに多いとも言われます。人材の待遇をいかに高めるかを、真っ先に考えるべきではないでしょうか。

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オープニングキーノートパネル & グランドフィナーレ
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日時:2023年2月22日(水)10:30 - 11:30
形式:オンライン
参加費:無料