2022年10月27日(木)
グローバルリーダーたちが語る、前工程と後工程の融合で進化する半導体技術の未来
株式会社エンライト 伊藤 元昭
後工程技術に特化した専門展示会「Advanced Packaging and Chiplet Summit(APCS)」が、2022年12月14日~16日に東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan 2022」に併せて開催されます。
SEMICON Japanは、どちらかと言えば、半導体前工程に関する情報が濃い展示会でした。もちろん、半導体産業の後工程に関する展示や講演もありましたが、システム技術との結びつきが強い後工程の性格上、業界動向を探る際には、SEMICON以外の展示会も併せて情報収集していた方が多かったのではないでしょうか。
これまで、半導体の前工程と後工程には、明確な役割分担がありました。このため、お互いの動きを知らなくても、それぞれの技術開発にはそれほど大きな支障は生じませんでした。ところが現在、「さらなる微細化や高集積化に欠かせない技術であるチップレットの利用拡大に伴って、これまでチップ内に形成してきたグローバル配線をパッケージの基板側に移すようになりました。前工程と後工程の境目、際の部分に技術革新が起きているのです。半導体の技術とビジネスが今後も発展していくためには、前工程と後工程の役割の融合・再定義が求められる局面にあると言えます。前工程の関係者は後工程の最新動向を、後工程の関係者も前工程の最新動向を知り、お互いシームレスなディスカッションする必要が出てきました」とAPCS実行推進委員会の委員長を務める折井靖光氏(長瀬産業株式会社 執行役員)は語っています。
最先端の後工程なくして、最先端の前工程は語れなくなりました。例えば、世界最先端の前工程技術を保有し、チップの受託製造ビジネスで世界をリードするTSMCは、後工程技術の開発とビジネスに最も力を入れている企業としても知られています。10年ほど前から「InFO(Integrated Fan-Out)」や「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」と呼ぶ新たな後工程技術に注力(図1)。これらをベースにしたチップレット技術を有効活用することで、同社の顧客企業であるAMDやNVIDIA、Xilinx、Appleなどは、ビジネス競争力を大いに強化しました。仮に、TSMCが後工程は管轄外とみなしていたら、現在の同社の強みも、顧客企業の競争力もなかったことでしょう。
図1 TSMCの競争力を支える後工程技術、InFOとCoWoS
出典:TSMC
日本は最先端後工程技術の進化の行方を論じるのにふさわしい場
APCSは、世界各地で開催されているSEMICONの中で、日本が先駆けて開催に踏み切った後工程の展示会です。日本での先行開催には、必然性があります。後工程に関わる技術革新を生み出す場所として、日本には米国や台湾にも勝る恵まれた環境が整っているからです。日本には、イビデン、京セラ、新光電気工業といった技術面で世界をリードするプリント基板メーカーが存在します。最新の後工程技術を生み出し、活用するための材料や装置を提供する企業も数多くあります。日本こそ、最先端後工程技術の進化の行方を論じるのに最もふさわしい場所であると言えます。
日本では、一部企業を除いて、最先端の前工程技術の開発が途絶えてから久しい状況です。EUV露光などを駆使する最先端前工程を立ち上げられる技術者がたくさんいるわけではありません。しかし、チップレットを実装する基板上の配線はKrF露光によるミクロンオーダーの配線が中心です。その一方で、300mmのシリコンウエハーではなく、500mmや600mmといった大面積のプリント基板やガラス基板など異質な材料上に、微細な配線を低コストで描く、前工程とは異なる技術ニーズがあります。そこでは、後工程固有の最先端露光技術が求められるのです。この領域では、日本の技術者の活躍の場が広く残されています。
最先端前工程技術を駆使する企業が望む後工程の技術革新とは
折井委員長は、「最先端の前工程技術情報を発信するSEMICONと世界をリードする後工程の情報が集まるAPCSが併催されることには、大きな意義があります」と述べています。後工程関係者にはSEMICONで収集できる前工程情報が、前工程関係者にはAPCSでの後工程情報が、それぞれの技術開発やビジネス戦略を考えるうえで高い価値を持つからです。そして、SEMICON Japanと同様に、APCSで用意されている数々の講演、セミナーには、世界でも類を見ないハイレベルなスピーカーが招集されます。会期中3日間を通して綿密に情報収集すれば、後工程と前工程の狭間で生まれる技術革新と最新ビジネスに関する情報を、効率よく、網羅的に収集できます。ここでは、数ある講演・セミナーの中から注目できる講演をいくつか紹介します。
12月15日(木)に、東2ホールに設置されるSuperTHEATERで開催される「Advanced Packaging and Chiplet Summit 2022 グローバルリーダーによるパッケージングの未来」には、最先端の半導体開発をリードするグローバルリーダーが集結。前工程と後工程を融合させて推し進める半導体技術の進化とその応用について語ります。
Intelからは、FellowのRavi Mahajan氏が登壇。「Challenges and Opportunities in Heterogeneous Integration using Chiplets」と題して、チップレットを活用した異種混載技術によるコンピューティングの進歩について講演します。講演の中では、同社が主導するチップレットの標準仕様「UCIe」の最新情報についても触れる予定です。
また、チップレット技術をいち早く導入してCPUビジネスで飛躍したAMDからは、Senior Vice President, AMD Technology & Product EngineeringのMark Fuselier氏が登壇。「Supporting the Future of High-Performance Computing」と題して、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を継続的に進化させるために今後10年間で求められるイノベーションについて語ります。
さらに、IBMからは、IBM Research Distinguished EngineerのRama Divakaruni氏が登壇。「Evolving AI Models and Implications to Semiconductor Technology」と題して、人工知能のさらなる進化を支えるモジュール上でのメモリーとロジックの統合技術などについて解説します。IBMは、日本政府が日本の半導体産業の再興を目指して実践する「半導体戦略」の第2段階であるステップ2、Beyond 2nmに関する技術開発に共に取り組む企業です。
日本電信電話からは、先端集積デバイス研究所 所長の竹ノ内弘和氏が登壇し、「IOWN構想における光電融合デバイス技術」と題して講演します。IWON構想は、半導体戦略の最終工程であるステップ2の中核を占めています。ネットワークとコンピューティング領域に変革をもたらす光電融合デバイス技術について概説します。
また、各分野の技術開発やビジネストレンドの最新情報を発信する「Tech & Biz」、最新半導体製造の国際技術シンポジウム「SEMIテクノロジーシンポジウム(STS)」でも、日本や台湾の企業、大学、研究機関による最新の後工程情報を提供します。例えば、12月14日(水)に会議棟605+606で開催される「日本、台湾における次世代コンピューティング、デバイス&パッケージング開発動向」では、富士通からスーパーコンピュータ「富岳」と次世代機に向けたパッケージング技術への期待を語ります。また、台湾Industrial Technology Research Institute (ITRI)は、GaNやSiCなどワイドバンドギャップ半導体の最新開発成果とそのモジュール技術を紹介します。その他にも、STS パッケージング セッション「パッケージング技術のイノベーション」ではパッケージの技術開発とビジネスの動向を一日で総覧できるプログラムを用意しています。
初日のSTSパッケージングセッション終了後には講師と直接交流いただけるオーサーズインタビューを、そして2日目のAPCS後のSuperTHEATERでは17時より講演者だけでなく委員や出展者の皆様をも交えたネットワーキングイベントパーティーが開催されます。名刺交換や情報交換など、未来を切り拓く糸口をつかむ絶好の機会になりそうです。
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APCS 2022 カンファレンス
Advanced Packaging and Chiplet Summit 2022
グローバルリーダーによるパッケージングの未来
日時:12月15日(木)13:00 - 16:20
会場:東京ビッグサイト 東2ホール SuperTHEATER
参加費:無料
日本、台湾における次世代コンピューティング、デバイス&パッケージング開発動向
日時:12月14日(水)11:30 - 12:30
会場:東京ビッグサイト 会議棟605+606
参加費:無料
STS パッケージング セッション
パッケージング技術のイノベーション
日時:12月14日(水)15:00 - 16:30
会場:東京ビッグサイト 会議棟607+608 および オンライン(Zoom)
参加費:SEMI会員 6,600円(※12/9(金)までの事前予約割引価格。以降は一般価格でのご案内)、一般 13,200円
ポスト5G社会実現に向けた先端パッケージング技術最前線
日時:12月16日(金)14:30 - 16:10
会場:東京ビッグサイト 会議棟605+606
参加費:無料