2022年1月27日(木)
空前の好況示す半導体市場、今後の行方をアナリストが討議
―SEMICON Japan市場予測のまとめ―
SEMIジャパン 安藤 洋一郎
半導体市場が史上空前の好況を迎え業界全体が多忙を極めるなかで、SEMICON Japan2021は開催されました。急激な需要拡大によりサプライチェーン全体に品不足や納期遅延が発生し、世界経済のボトルネックともなった半導体関連市場の動向に、これまでとは比較にならないほどの幅広い注目が集まりました。2021年のSEMICON Japanに人々は「この成長はいつまで続くのか」という疑問への答え?を期待したといえるでしょう。本稿では、SEMICON Japanが発信した様々な情報の中から、SEMIのアナリストおよび証券業界のアナリストによる今後の市場動向に対する見解と予測を取り上げます。
SEMIのアナリストによる予測
SEMIは年間に7月の年央と12月の年末の2回、半導体製造装置市場の予測を発表しています。年末の予測発表はSEMICON Japanの開催前日に発表されることになっており、SEMICON Japan 2021でも、開催前日となる12月14日の記者会見において、2021年から2023年の3年間の市場予測がリリースされました。
これによると半導体製造装置の世界市場は、それまでの過去最高であった2020年の710億ドルから、2021年には44.7%増の1030億ドルと初めて1000億ドルを突破し、2022年にはさらに1140億ドルへ成長することが予測されます。その後2030年についても1130億ドルと横ばいで高水準は持続される見込みです。
(出典:SEMI半導体製造装置市場統計レポート年間購読、2021年12月)
半導体製造装置市場の約85%を占めるウェーハファブ装置は、2021年に43.8%増の880億ドルに成長しました。2022年にはさらに12.4%成長し990億ドルに達するでしょう。この半分以上はファウンドリおよびロジック分野で購入されています。2021年にはウェーハファブ装置全体の56%に当たる493億ドルが投資されました。この分野の装置投資額は2022年も17%の旺盛な成長をするでしょう。投資は最先端ノードだけではなく、従来ノードにも投下されています。2023年は、-0.5%の微減となる984億ドルが見込まれています。
NANDおよびDRAMのメモリー分野が、旺盛な企業および消費者需要に支えられて、残りのウェーハファブ装置の大半を購入しています。2022年のDRAM装置は、2021年に52%増の151億ドルに達し、2022年は153億ドルが予測されています。NANDフラッシュ装置は、2021年に24%増の192億ドル、2022年は8%増の206億ドルに達することが予測されます。2023年はDRAM装置が-2%、NAND装置が-3%減少の見込みです。
また、半導体材料についての市場予測について、SEMICON Japan期間中の2021年12月16日に開催された「SEMIマーケットフォーラム」において、SEMIアナリストのInna SkvortsovaがSEMIとしては最新の予測結果となる2021年9月時点での予測データを講演いたしました。これによると、材料市場トータルでは、2019年以降の連続成長が2022年まで持続する見通しで、2021年は11%成長し620億ドルに達し、さらに2022年は7%成長して650億ドルを超えるでしょう。その内、ウェーハファブ材料が2023年で420億ドルを占め、パッケージング材料は230億ドルと予測されています。
半導体材料市場予測
(出典:SEMI材料市場統計レポート年間購読、2021年9月)
証券アナリストによる予測
12月16日には、証券トップアナリストによるパネルディスカッション「Bulls & Bears」が開催されました。2020年に続き第2回となった今回はテーマが「半導体ブームの行方と2022-2023年装置市場」と、そのものズバリだったこともあり、早々に満席になり多くの聴衆が詰めかけました。モデレータは、第1回に引き続きOMDIAシニアコンサルティングディレクターの南川明氏にお願いし、パネリストには、ジェフリーズ証券の中名生正弘氏、JPモルガン証券の森山久史氏、東海東京調査センターの石野雅彦氏、UBS証券の安井健二氏という布陣。南川氏は冒頭、パネリストのアナリスト経験年数は合計100年になるとご紹介されました。
現在の半導体市場の好調を支える要因として、各アナリストから挙げられたのは次の2点に集約できるでしょう。
①ビデオ配信サービス、ビデオ会議などのデジタル化、メタバースの拡大によるデータ通信量の増大
②パンデミックの影響下での実需の見誤りにより、製造業が手持ち在庫を使い果たし、安全在庫の確保に動いたことによる需要のかさ上げ
①についてはデジタル化の進展は今後も続き、またデジタルネイティブなZ世代のデータを大量利用するライフスタイルにも後押しされて、データ量の増加は留まることはなく、中長期的な半導体需要の拡大傾向をけん引すると見られます。特に注目すべきなのは、Amazon、Microsoft、Googleなどの巨大クラウド企業(ハイパースケーラー)であり、その利益の増加はデータセンターへの設備投資に直結し半導体市場をドライブすると考えられます。
一方の②の安全在庫については、およそ2カ月分、15%~20%程度の在庫積み増しが完了した時点で、実需のかさ上げがなくなることになります。その時期がいつかということについては、2022年の前半から年末まで意見が分かれました。しかし、①による需要拡大の持続により、2023年の半導体市場の縮小は数パーセント程度と小幅になるというのが大方の見方です。需要の増加が調整による縮小を上回る考えも示され、メタバースの普及がその鍵だとの意見もありました。市場の構造が需要ドリブンなものに変化し、連続成長が続くという見方です。
半導体市場の足元での好調、さらには中長期的な成長予測を受けて、旺盛な設備投資が続いています。半導体製造装置市場は2021年の急激な成長に続き2022年も二桁成長を維持するところまでは、現時点の受注状況から各アナリストとも確実視しています。2023年には資本集約率が20%を超えて調整に入るとの見方がありますが、その場合も大幅な下落はせず、数パーセントからせいぜい10%程度との想定です。
ここで多くのアナリストが言及されたのが、各国政府が半導体産業に投下する資金です。SEMCON Japan初日にも、岸田首相からのメッセージとして官民合わせて1兆4,000億円の投資を行うことが語られ、甘利衆議院議員からは最先端の半導体製造ラインを国内に構築するために今後10年間で最低7兆円、できれば10兆円を官民合わせて投資する計画を検討中であると語られました。米国、欧州、中国など各国政府は同様に経済安全保障の観点から半導体産業への積極的な資金投下に動いており、これが実行された場合は設備投資が10%程度の上振れをすることが考えられます。
最後に中国装置市場について議論がされましたが、日本の装置メーカーにとっては今後も大きな市場となることは間違いとの意見が多数を占めました。一方で過去の日米半導体貿易交渉のように米国が最先端についてはコントロールするので、その面では米国をビジネスの中心に置くべきとの意見もありました。しかし、膨大な人口を抱える中国域内で経済ブロックのように半導体需要が喚起されること、また過去20年間にコンテナ、造船、鉄鋼、液晶、LED、EV電池と狙った産業で全て勝ってきていることが指摘されました。また、中国の製造装置国産化の動きについては、まだ国際的競争力のあるレベルには到達していないとの見解が示されました。