2025年12月11日(木)
サステナビリティ・キーノート~地球環境と経済を支える半導体🌿
株式会社エンライト 伊藤 元昭
高度に進化したAIによるデータ活用が爆発的に活発化してきています。その応用は生活やビジネス、社会のあらゆるシーンに及び、暮らしはより豊かで便利なものへ、ビジネスや社会活動はより効率的で効果的、高付加価値なものへと変貌しています。こうした「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を下支えしているのが、高度なAIを機能させ、データの収集・活用するために利用されている半導体チップです(図1)。AIの進化とともに半導体の活用領域は急拡大。需要はかつてないペースで急増しています。そして2030年には、半導体市場は1兆米ドル以上の規模に成長すると予測されるまでになりました。
その一方で、豊かさや便利さを持続可能(サステナブル)なものにしていくための取り組みも欠かせなくなってきています。気候変動や環境破壊の深刻化への対処に向けた経済・社会システムの再構築はその代表例です。「グリーントランスフォーメーション(GX)」と呼ばれるこうした取り組みを推し進める上で、半導体産業には2つの役割が期待されています。1つは、GXをより効果的かつ円滑な推進に資する機器/システムを作るために必要な半導体を潤沢・安定的に供給すること。もう1つは、半導体チップを製造する過程で排出する地球温暖化ガス(GHG)や環境破壊物質の最小化、水などの自然資源の有効活用の実現です。
図1 DXとGXの実践に半導体は欠かせない
DXを推進するために半導体産業の成長は欠かせませんが、その成長に伴って、半導体サプライチェーン上での電力、材料・薬品、水などの消費量が必然的に増大していきます。つまり、世界が推し進めるDXを持続可能にするためには、半導体産業でのGXの実践が必須であると言えます。
密接に連携・補完し合う関係にある「DX」と「GX」
そもそもDXとGXは、それぞれ独立した取り組みではありません。相互に連携し、一方の推進がもう一方を加速させる「車の両輪」のような相互補完関係にあります。
例えば、AIの活用シーンを拡大するためには、高度なAI処理を実行するデータセンターをより多く稼働させる必要が出てきます。当然、そこでの電力の消費量は増大し、GXを実践しなければ、AI活用は持続可能ではなくなります。
その一方で、GX(脱炭素化や環境破壊物質の削減、循環型社会の構築など)を推し進める上で、DX(デジタル技術)は強力な手段となります。多様なパラメーターが複雑に絡み合って稼働する産業/社会システムやサプライチェーン全体を対象にして、エネルギーの最適化やCO2排出量の削減を実現するためには、AI、IoT、データ分析といったデジタル技術の活用によるキメ細かな状況把握とシステム制御が不可欠になります。スマートファクトリーやスマートシティーは、その代表例です。
グリーン化に貢献するチップを、グリーン化した手段で作る
DXとGXの実践という2つのメガトレンドを後押しし、さらに加速するため、半導体メーカーは2方向からのアプローチに取り組むようになりました(図2)。1つはより少ない電力消費でより高い演算能力を有するチップを開発・製造すること。もう1つは、より少ない電力と資源の消費でGHG排出を最小限に抑えながらチップを製造することです。
図2 半導体ビジネスのグリーン化に向けた取り組み
半導体応用機器のグリーン化に貢献するためのチップの進化・改善手段は多様です。具体的には、(1)プロセス微細化(ノードの縮小)/素子構造の改善による性能/電力効率の改善、(2)必要な時だけ必要な分だけの電力を供給する電源設計の高度化、(3)新材料の導入による電力損失の削減、(4)回路の特徴に合わせて最適プロセスで製造するチップレット化とヘテロジニアス統合の適用、(5)従来汎用プロセッサで実行していた処理の専用アクセラレータ化、(6)データ伝送距離を短縮する3D積層化(HBM / 3DICなど)、(7)新材料や新構造の導入によるアナログ・RF・パワー・センサーの高効率化、(8)オンデバイスAI化によるクラウド利用の削減、といった方法があります。
これからの半導体メーカーは、グリーンな半導体チップを作り出すため、より多様な技術を適材適所で使い分けるための体制を整える必要がありそうです。
また、チップの製造そのものをグリーン化するために、半導体メーカーが行うべき取り組みも多様です。具体的には、(a)再生可能エネルギーの活用や省エネ製造装置の導入など製造ラインのエネルギー効率向上と脱炭素化、(b)水資源の循環利用、(c)ガス/化学物質管理の厳密化、(d)サーキュラー素材の有効活用、(e)グリーン化の取り組みに関わる認証取得やガバナンスの透明化、といった取り組みがあります。こうした取り組みを実施するためには、相応の追加コストを覚悟する必要があります。例えば、再エネ由来の電力の料金は、一般的な電力よりも高くなります。
ただし近年、半導体チップを購入するユーザー企業側に、脱炭素化した製造体制で作られたチップをプレミアム価格で購入する素地ができてきています。中には、約2割ものプレミアム価格が許容されている例もあり、グリーン製造は、半導体メーカーにとっての新たな付加価値になりつつあります。
半導体の持続的成長を考える、「AI x Sustainability x Semiconductor Summit」
2025年12月17日(水)~19日(金)に東京ビッグサイトで開催されるSEMICON Japan 2025では、AIとサステナビリティに関わるプレーヤーが集まるスペシャルサミット「AI x Sustainability x Semiconductor Summit」を併催します。
西展示棟1階 西アトリウムに設置する展示会場では、最新情報を提供。本年、SEMIジャパンサステナビリティ委員会では、半導体産業の未来をみなさまとともに考えるため、”2040年半導体が描く未来図”を作成しました。西アトリウムで展示される未来図パネルをご覧いただき、簡単なアンケートにお答えいただいた方には、「未来図クリアファイル」を先着でプレゼントいたします。半導体がサステナビリティに果たす未来について、ぜひ思いを馳せていただき、これからの社会や産業のあり方について考えるきっかけとしていただければ幸いです。
AI x Sustainability x Semiconductor Summit
Driving a Sustainable Future with AI and Semiconductor Innovation
AIと半導体技術の革新が持続可能な未来を推進する