2025年1月7日(火)
SEMICON Japan 2024レビュー 未来を探る視点
日本の半導体製造再興、いよいよ実践期へと突入
株式会社エンライト 伊藤 元昭
2030年には1兆ドルに達するとされる世界の半導体市場――。世界の成長と持続可能性を支える原動力として、半導体の重要性が高まる一方です。伸びゆく市場環境下で、日本政府が推し進めているのが「半導体・デジタル産業戦略(いわゆる半導体戦略)」による半導体製造再興です。2024年12月11日(水)~13日(金)に、東京ビッグサイトで開催された「SEMICON Japan 2024」では、再興の具現化に向けて着実に前進していることを感じさせる多くの講演・報告がありました。
ここでは、会期初日に開催された「Opening Session 1兆ドル半導体市場への挑戦」での講演を基に、SEMICON Japan 2024で示された日本における半導体製造再興への取り組みの現在地をまとめます。
世界の成長と持続可能な社会の実現に向けた日本の役割とは
Opening Sessionでは、半導体戦略を主導・実践する役割を担っている方々が登壇。近未来の半導体産業の中で日本が果たす役割について議論しました。
半導体戦略の構想初期から政界をまとめてきた前衆院議員 半導体戦略推進議員連盟名誉会長の甘利 明氏は、Opening Sessionの基調講演の中で、次のように半導体戦略の意義と現在、将来の波及効果について語りました。
「半導体の世界では、今日の1位が、明日の1位であり続けることを約束されているわけではありません。イノベーションを起こし続ける企業のみが生き残り、成長できるのです。現在、半導体業界は、2つの大きな変化の最中にあります。1つは、イノベーション創出に不可欠な最先端半導体を開発・具現化する際の新たな選択肢となるファウンドリが立ち上がろうとしていること。今現在は、ますます高度化・複雑化していく未来のシステムの中核に置く半導体を高歩留まりで具現化する機能を持つファウンドリがTSMCしかありません。これは世界が抱えているリスクであると言えます。ラピダスは、イノベーションに欠かせない最先端半導体を迅速に作り出す新たな選択肢であり、ここに同社の存在意義があります。もう1つは、価値ある新たな半導体を生み出すためには、前工程技術だけでなく、後工程技術での先進的技術の活用が重要になっていることです。後工程の領域には、明日の1位を生み出すイノベーションが萌芽する可能性があります。そこでも、確実に基盤を整えつつあります。こうしたイノベーションを後押しする仕組みを活用し、行動した者だけが、明日を生き延びることができことでしょう」。
一方、アカデミアと企業の連携による技術開発の側面から半導体戦略の推進をリードしてきた理化学研究所 理事長の五神 真氏は、世界が取り組む持続可能な社会の構築を支援する、日本の役割について語りました。
「気候変動や社会の分断など地球規模課題が一層深刻化しています。これは人間の行動によって起きた事態であり、その解決に向けた現代を生きる私たちに課せられた責務であると言えます。高度経済成長時代の日本では、公害によって豊かな自然環境が一度失われました。しかし、その後、技術の進化と社会の取り組みによって見違えるほど回復させることができました。私は、同じことを、地球規模でも必ず再現できると確信しています。こうした経験を持つ日本の技術は貴重です。持続可能な社会の実現に向けた取り組みの中でデジタル技術が果たす役割は大きいと思われます。スーパーコンピュータ、AI、量子コンピュータのさらなる進化による、リアルタイムでのキメ細かな最適対処が欠かせません。さらに、それらの計算能力を活用した先端科学研究の発展も不可欠です。そうした仕組みを作り上げるために、半導体のさらなる進化と潤沢な生産が求められます」。
日本の半導体業界だからこそできる貢献がある
続いて開催されたオープニングキーノートパネル「サステナブル社会実現にむけた半導体技術の挑戦」では、日本電信電話(NTT) 会長の澤田純や、2027年に最先端半導体の量産を目指すラピダス 会長の東 哲郎氏、デンソー 最高技術責任者(CTO)の加藤良文氏がパネリストとして登壇し、半導体産業が目指す未来について議論しました。ここでは、日本の半導体産業が果たす役割について議論した部分にフォーカスして紹介します。
最先端ファウンドリービジネスの立ち上げに取り組む東氏は「今後、DXやGXの取り組みが進む中で、半導体で消費する電力は爆発的に増大していくことでしょう。豊かで持続可能な社会を生み出すために不可欠な半導体自体が、持続可能性を脅かす可能性があるわけです。こうした状況を解消するため、さらなる微細化、パッケージングの3D化、用途特化した専用設計への対応といった、半導体の複合的進化を推し進めていく必要があります。ラピダスでは、これら時代と社会の要請に応える半導体ファウンドリサービスを提供していきます。2024年12月には、いよいよEUV露光機が搬入され、パイロットラインが2025年4月に稼働を開始します。そして、世界の期待に応えていく時期に入ろうとしています」と語りました。
日本の基幹産業である自動車領域で独自半導体の開発を指揮している加藤氏は「現代の自動車は多様な半導体の塊と言える存在になっています。そして、半導体が果たす役割は、年々高まっています。自動車の中核に据える半導体を進化させる際、日本が果たすべき役割は大きいと考えています。近未来車の頭脳となるAIを動かすSoCを搭載車に合わせて最適な形で作るために欠かせないチップレットや、電動車の効率を極限まで高めていくためのパワー半導体の新材料では、いずれも日本が強い要素技術を保有しているからです。これらの技術は、自動車向けだけに限らず、データセンターなど他領域にも展開可能です。自動車業界での半導体開発の波及効果は大きいと考えています」と語りました。
光電融合技術による高性能化と低電力化を両立させた半導体のイノベーションを主導している澤田氏は「光電融合技術である『IOWN』は、日本発のイノベーションです。日本は、光伝送技術の開発と社会実装で世界をリードしてきました。そして、2025年度にはボード間を光で接続する『IOWN2.0』を、2029年度には対象をチップ間接続に深めた『IOWN3.0』を、2032年度以降にはチップ内も光で信号を伝送する『IOWN4.0』を実用化するロードマップを描いています。IOWN2.0では電力効率を13倍、IOWN4.0では100倍に高めることができるとみています。その実用化を見据えた技術開発は着々と進んでおり、光電融合技術が重要な役割を果たす未来が見えてきています」と述べました。