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2023年11月29日(水)

高度な後工程技術の活用拡大で活発化してきた、装置・材料・設計環境での技術革新

株式会社エンライト 伊藤 元昭

 

3Dや2.5Dといった高度な後工程技術の適用による価値創出の重要性が高まってきました(図1)。これに伴って、後工程技術の進化と量産適用を支援する新たな装置・材料・設計環境が生まれ、利用されています。現在要求されている高度な後工程向けの装置・材料・設計環境は、それらの技術を開発・提供するサプライヤーにとっては新市場となります。このため、開発競争と有力半導体メーカーとの関係を強化する動きが活発化。要素技術の進化にも後押しされて、今後は、さらに高度な後工程技術が登場してくることでしょう。今回は、半導体後工程技術の進化に伴う、後工程要素技術の進歩の方向性について紹介します。
 

図1


図1 最先端の後工程技術を活用して製造されたロジックチップの例 
出所:Intel

 

後工程には前工程とは切り口の異なる最先端露光装置が必要

個片化した小さなチップである「チップレット」を基板上に複数個集積して、1つのチップとして機能させる手法が、最先端のロジックチップの製造手法を中心に広く使われるようになりました。特に、世代やプロセス技術、製造元の異なるチップレットを集積することによって多機能で高いシステム性能のチップを小さく作ることが可能な、「ヘテロジニアスインテグレーション(HI)」は、これまで以上に付加価値の高いチップを作る手段として活用の拡大が見込まれています。

こうした技術を適用するためには、チップレットを積層するインタポーザと呼ぶ基板に微細な再配線層や、チップレットと基板の間を接合する微小なバンプを形成する必要があります。これらのパターン形成は、チップレット内部の回路を描く前工程用に比べれば線幅の広い露光で対応できます。しかし、従来の後工程向け露光装置に比べれば、はるかに微細なパターンを描く性能が求められます。また、前工程用露光技術よりも、技術的に高度な部分もあります。より広い焦点深度と大型インタポーザに対応する必要がある点です(図2)。
 

図2


図2 高度な後工程に向け露光装置と4ショットで大型インタポーザを露光した例
出所:キヤノン

 

広い焦点深度が必要な理由は、微細バンプをめっきで形成する際のマスクに厚膜レジストを利用しているからです。一般に、露光装置の焦点深度を広げるためにはレンズの開口数(NA)を小さくする必要があります。しかし、NAを小さくすると、解像度が低下し、微細パターンを描くことが困難になってしまいます。こうしたトレードオフを解消するため、新たな技術の開発が進められています。

一方、大型インタポーザは、高性能コンピューティング(HPC)や人工知能(AI)などの処理を実行するデータセンター向けに求められます。パネル基板と呼ぶ、従来の300mmウエハーよりも多くのインタポーザを切り出すことが可能な大型角型(例えば510×515mm)といった基板を対象にして露光。ただし、大型インタポーザを露光する場合には、1回でインタポーザ全体を露光することはできません。いくつかの領域に分けて分割露光します。それを実現するため、歪みを最小化したレンズが必要になります。

最先端の前工程用露光装置ではシェアを落としてしまっている状態の日本企業ですが、こうした領域では、蓄積してきた露光技術に関する知見を生かして競争力の高い装置を開発・提供していけそうです。

 

インタポーザ用基板材料として急浮上してきたガラス

材料の領域でも、後工程技術のさらなる進歩を目指した新たな技術の導入が検討されています。米Intelは、次世代パッケージ向け基板として、ガラス基板を採用することを明らかにしました(図3)。データセンターのサーバーやグラフィックスなど、特に負荷の大きな用途で利用するプロセッサーに、2020年代後半に投入する予定だと言います。
 

図3


図3 Intelによるガラスを用いたパッケージ基板の試作品
出所 Intel

 

ガラス基板を利用すれば、従来の有機基板よりも高性能で高密度な大型パッケージを実現できます。これは、ガラスは高温での耐性が高く、回路パターンの歪みを最小限に抑えることが可能で、しかも平坦性も高いからです。前工程に用いるSi基板では、電気的特性とプロセスでの加工の容易性が何より重視されます。これに対し、後工程で用いるインタポーザなどの基板では、電気的特性や加工の容易性だけではなく、機械的特性や放熱特性なども同程度に重視されます。そうした傾向は、基板のサイズが大きくなるほど顕著になり、そこに新たな材料開発のニーズが生まれています。

これまで、パッケージ基板用材料を供給するメーカーでは日本企業の存在感が大きかったかと思われます。もちろん、樹脂基板も今後も多くの用途で利用されることになると思われ、その存在感が損なわれることはないでしょう。むしろ、液晶パネルのガラス基板の供給で日本企業が重要な役割を演じたように、パッケージ用ガラス基板の利用拡大は日本のガラスメーカーにとっての新市場になる可能性があります。

 

高度な後工程技術も、対応する設計環境がなければ利用できない

さらに設計環境は、今後、最も大きな変化が起きる可能性がある領域となっています。パッケージ用基板を設計する際には、電気的特性はもとより、機械的特性や放熱特性、さらには周辺電子機器への電磁波障害を起こさず、逆に受けない電磁両立性(Electromagnetic Compatibility:EMC)特性など多様な要因を勘案した設計が求められます。さらに、チップレットを使用する際には、各チップレットの動作を統合した、チップ全体の機能・性能が想定通りに実現できることを論理レベル、物理レベルで検証する必要もあります。3D/2.5Dチップの設計は、これまでのモノリシックICとは違った意味で複雑であり、設計期間を短縮するためには設計作業の自動化/効率化が必要になってきます。

高度な3D/2.5Dチップを設計する環境を実現するためには、適用する実装技術や使用する基板材料などに応じた設計と検証ツールの進化が必須です。また、専門性の高い複数の設計/検証ツール同士を連携動作させる仕組みも必要になってきます。こうした設計環境が構築できないと、いかに高度な後工程技術を確立できても、チップ設計者が利用することはできません。

前工程のみならず、最先端後工程技術の開発・事業化においても世界をリードしている台湾TSMCは、高度な後工程の開発・設計環境の整備も卒なく進めています。同社は、顧客企業が開発する最先端ロジックチップの設計と量産立ち上げの期間短縮、早期市場投入を支援する「Open Innovation Platform(OIP)」と呼ぶ仕組みを保有しています。顧客企業と設計・製造に関わる技術を提供するパートナー起用が協業し、TSMCの先進的製造技術を最大限利用したチップを開発するための仕組みです。同社は、2022年に、3Dチップの設計を支援するための仕組みを強化しました(図4)。「メモリー」「OSAT」「テスト」「基板」という4領域での協業を促すことを狙ったものです。
 

図4


図4 TSMCがOIPに追加した後工程関連の新たな4つのアライアンス
出所:TSMC

 

加えて同社は、2022年に、先端チップの設計に利用する多様なEDAツールの間で設計・製造に関わる情報を共有し、連携しながら相互運用できるようにするための言語「3D Blocks 1.0」を発表しました。設計初期段階での3D ICの実現可能性解析、自動マルチフィジックス最適化、自動基板配線、InFO配線などを可能にする言語です。そして2023年には、EMIR(Electro Migration and IR drop)や熱、機械的応力、チップ間のDRC(Design Rule Check)などの解析情報も包含した「3D Blocks 2.0」へと進化・拡張させました。

日本においては、とかく製造技術での後工程の進化に注目が集まりがちです。しかし、今後、日本の半導体メーカーが最先端ロジックチップの製造でリードしていくためには、こうした設計環境を自社の後工程向けに最適化して用意していく必要がありそうです。

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