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2024年12月6日(金)

半導体の製造能力と設計力は産業競争力増強の両輪、設計強化を支援するADIS

株式会社エンライト 伊藤 元昭
 

半導体産業の再興を目指して、日本国内では政府主導の下で多数の半導体工場が建設されています。最先端のデジタル半導体から車載半導体、さらにはパワー半導体など、多様な領域のチップを国内で生産可能になります。もちろん、前工程の工場だけでなく、後工程の工場も増強されていきます。そして近い将来、国内には莫大な量の半導体チップの製造能力が現出することになりそうです。

政府が、チップの生産能力を強化する狙いには、国内産業の国際競争力の向上とサプライチェーンの強靭化、さらには経済安全保障上の観点などがあります。これらを総じて言えば、日本で必要とされるチップを、自国内でまかなえる体制を整えたいということになります。ここで1つ大きな疑問が浮かんできます。増強した製造能力で作るチップは、誰が設計するのかという点です(図1)。立ち上がる工場の多くが、製造専業のファウンドリービジネスに適用することが想定されているためです。

図1


図1 日本国内で生産するチップは、誰が設計するのか
出所:AdobeStock

 

たとえ、日本国内に半導体製造拠点がどんなに数多く立ち上がったとしても、それらの拠点で製造するチップを設計する力が養われなければ、日本の産業競争力の底上げにはつながらないように感じます。こうした背景から、2024年12月11日(水)から東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan 2024」では、新世代の半導体設計と検証分野にフォーカスした新たなサミット「Advanced Design Innovation Summit(ADIS)」を新設し、同時開催します。

 

全盛期から激減が予想される日本の半導体チップ設計者

半導体産業の全盛期だった1980年代から90年代。国内半導体メーカーのほとんどが設計と製造の両方を自社で行うIDMでした。加えて、国内には、ASICを利用して独自チップを設計し、自社製品を差異化する多くの機器メーカーが存在しました。このため、チップ設計の担い手は、数多くいました。

日本国内の半導体設計者の人数がどのように推移しているのか、直接示す公開されている統計は見当たりません。しかし、公益財団法人NIRA総合研究開発機構が、経済産業省の「工業統計調査」「経済センサス」「経済構造実態調査」のデータを基に集計した結果によると、1998年に約23万2000人だった半導体関連産業に従事する人数は2021年には約17万8000人と約23%減少しています(図2)。そこからさらに半導体製造装置メーカーに従事している人の数を除くと、同じ期間内に約20万人から8万5000人へと約53%も減少していることがわかります。この人数には、もちろん生産や製造プロセスの開発に従事している人が多く含まれていますから、直接半導体設計者の数が減ったことを示すわけではありません。それでも、激減していることは容易に想像できます。

図2


図2 日本国内では半導体設計者が激減していることが予想される
出所:公益財団法人NIRA総合研究開発機構

 

さらに、機器メーカーでのASIC設計者はどうでしょうか。ASIC開発を伴う独自ハードウェアによって自社製品を差異化する例は、明らかに減少しているのです。標準的なマイコンやチップセット、FPGAなどをベースに、ソフトウェアによる独自機能開発を進める機器開発トレンドが拡大してきたからです。このため、ASIC設計の案件自体が減少していったことが予想されます。これは日本だけでなく、世界全体で見られる傾向です。

 

チップ設計者の需要がにわかに高まってきた

ところが、直近に絞ってみれば、全く逆の動きが見えてきます。技術の高度化と応用の急拡大が進んでいるAIの領域では、クラウドサービスをリードしているGAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoft)が例外なく独自チップを設計して自社データセンターに投入しています。中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)も同様です。もはやAIクラウドサービスは、自社設計力が競争の論点の一つとなっています。

さらに、自動車業界では、Teslaが自社製品に搭載するチップを独自開発しています。クルマの情報化と知能化に対応するための高度で独自性の高いチップ設計が必須になっているからです。日本の自動車産業でも同様の方向に向かいつつあります。これから、独自チップを設計する業界が、さらに増えてくることが予想されます。このため、チップ設計者の需要は急増していきそうです。

図3


図3 チップだけでなく、パッケージやシステム開発での高度な設計者も必要に

 

加えて、チップレットの導入など、より高度な後工程技術の導入が進むことで、システムや基板の設計に精通するエンジニアの需要が高まっています(図3)。この部分では、放熱や機械的性質など、チップの設計とは異なる技術要素が含まれます。プリント基板設計に携わる設計者は、激減が予想されるチップ設計者に比べれば、日本国内に温存されていることが予想されます。しかし、チップレットなどを扱える、新たな知見・スキルを持つ設計者の育成を急ぐ必要がありそうです。

 

日本の設計力強化を支援するADIS、半導体産業をより強固に

20年以上減り続けてきたことが予想される半導体チップの設計者ですが、技術とビジネスの潮流を見る限り、これから増やしていかなければならないことは明白です。日本企業が独自設計した多種多様なチップが、増強された工場で安定的に製造・供給されることで、はじめて目論見通りの産業競争力強化が成就すると思われるからです。

図4


図4 設計力のさらなる強化、発展、活性化を後押しするADIS

 

SEMICON Japan 2024と同時開催するADISでは、設計力のさらなる強化、発展、活性化を後押しし、モノづくり分野と連携することによって、日本の半導体基盤を強固にしていきます(図4)。会場内のSuperTHEATERに隣接する場所に展示エリアを設けて、主要EDAベンダーが勢揃いして最新情報を提供します。また、12月12日(木)には充実したカンファレンスが開催され、近未来の日本における半導体設計の姿を展望します。

東7ホールのTechSTAGEでは、「新たな車載向けSoC設計の幕開け SDVプラットフォームが変える次世代モビリティとSoC設計」が開催されます。スマホ化した自動車と称される「ソフトウェア定義車両(SDV)」の開発・市場投入を見据えて、SDVプラットフォームに基づくシステム、ソフト、SoCを密に連携させた開発体制の構築と設計力の醸成が求められています。ここでは、次世代モビリティの姿と、開発の手法と環境の整備に向けた取り組みの最前線を、自動車業界の半導体開発に精通した研究者やエンジニアなどが解説します。

続いて同じ場所では、パネルディスカッション「『EDAベンダが語る』設計現場の最前線」が開催されます。主要EDAベンダー各社が垣根を越えて集い、今後の半導体の設計や検証について議論します。ここでは、チップレットの使用を想定した半導体回路設計、パッケージング、システムレベルの設計や検証について現状を整理。課題を洗い出して、将来の向かうべき方向性を議論します。

同日 会議棟1階 レセプションホールBのTheSUMMIT Bでは、「半導体設計の未来予想図:日本の設計環境を変える時」が開催されます。ここでは、産官学の代表者が集い、これから日本で求められる半導体設計の体制について議論します。そして、応用システムを開発する企業のエグゼクティブやリーダー、若者エンジニアと半導体デバイス設計の重要性を共有します。

 

進化著しいパッケージングの最新情報を提供するAPCS

また、今年で3回目の開催となる半導体パッケージングおよび基板実装分野のトッププレイヤーが集結する「Advanced Packaging and Chiplet Summit (APCS)」も、内容をさらに充実させて開催されます。

SuperTHEATERに隣接する場所に展示エリアを設けて、半導体設計を支援する関連各社が展示。12月12日(木)には、東2ホール SuperTHEATERにて、「Advanced Packaging and Chiplet Summit 2024 グローバルリーダーによる先端パッケージングの最前線と技術の方向性」が開催されます。ここでは、ガラス基板の活用を含むインタポーザー技術、AIのさらなる高度化などに必要なパッケージ技術、異種回路を1パッケージに統合するための設計技術、チップレット技術などの最新動向を、それぞれの領域の第一人者が解説します。

 ADISとAPCSでは、日本のチップ製造体制の価値をさらに高めるための最新情報を提供します。是非、足を運んで、日本の半導体業界の新たな価値創造にお役立てください。

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