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WORLD OF IOT_通信_Report_1

  新たなステージのIoTがもたらす社会と産業の姿
                  - デジタルエコノミー時代のイノベーションエンジン -

 

木下 剛

 

一般財団法人インターネット協会 副理事長 
木下 剛

IoTエバンジェリストとして業界活動に幅広く従事中。
元 シスコシステムズ 日本法人専務執行役員、最高技術責任者(CTO)

 

 

WORLD OF IOTの開催にあわせて、今やあらゆる産業界から注目を浴びる「IoT」を取り巻く状況を、今回から4回に分けて最新動向をレポートしていきます。
第1回目は 2013年を元年としたマーケティングハイプのステージから明確な導入拡大段階に移行している2016年、新たなステージを迎えた「IoT」 について、テクノロジーとビジネスの両面から俯瞰したいと思います。

 

IoTデバイス、IoTテクノロジー、IoTアプリケーション

初期のIoTを牽引したのは、1999年頃に登場したRFIDや各種センサー・テレメトリックス利用に代表される「M2M (Machine to Machine)」でしたが、ここ数年、ウエアラブル端末、スマートメータ、ドローン、コネクティッドカー、コネクテッドロボットなど毎年続々と新登場するネットワーク化デバイスを背景とする“つながるモノ”の爆発的増加が顕著となっています。2016年には1日あたり550万個のIoTデバイス・センサーが新たにインターネット接続され、その総数は前年比30%増の64億個となると予測されています。 *1

 

internet of things

 

このように多様なIoTデバイスが急速かつ膨大につながっていく環境の登場は、これを支えるテクノロジーの観点からは、システムとしてのスケーラビリティ、複数のシステム・ユーザドメインにまたがったサービス運用性、セキュリティ対策など新たな課題を顕在化させました。こうした中、現在、世界中で取り組まれ急速な進展を見せているのが、IoTサービスを快適かつ安全に最大限活用できるよう、システムレベルから抜本的に見直された新たなIoTシステムに向けたテクノロジーイノベーションです。

この新たなIoTシステムを支えるテクノロジーイノベーションとして特に注目される領域には、①エンドポイント、②通信方式、③AIを含むアナリティックス、④データリポジトリーとサービスオーケストレーションを提供するIoT Appプラットフォーム (AEP)、⑤IoTセキュリティなどがあります。

①エンドポイントにおける技術革新の代表例は、センシング技術領域のドローン、ボッド、Computer Visionにおける多様化や、エナジーハーベストデバイス、フレキシブルプリンティングセンサーがあげられます。また、これらIoTエンドポイントのネットワーク化には、②低電力と長距離通信を両立できる新たなワイヤレス・無線通信技術が不可欠ですが、LPWN (Low Power Wide Area Network)におけるLoRa、SIGFOX、Ingenu RPMAなど、ここ数年でこれらIoTエンドポイントとネットワーク化技術の革新が実用化も含め急速に発展しています。
③アナリティックス領域においても、これまでと異なるスケールで生成されるIoTデータボリュームに対応すべく、スマートファクトリーにフォグコンピューティングを導入し、最新AIをエッジ領域に適用していく段階を迎えています。IoTシステムを構成する主要テクノロジー概要について、調査会社ガートナーによる IoT主要技術トップ10の最新リストとあわせ、下図でご紹介します。

 

IoTテクノロジー:イメージ図

internet of things 出典:インターネット協会 IoT推進委員会作成

 

IoTテクノロジーは現在、このように多様で高度なテクノロジーイノベーションが同時並行で進行中です。市場から求められる、容易かつ迅速なIoTサービス開発と持続的な付加価値創造を実現していく上で、 とりわけ大きな鍵となるのが、④“IoT プラットフォーム”です。現在、広義の“IoTプラットフォーム”として一般に紹介されている製品・サービスの数は、当初、M2Mサービス向けに開発されたものをベースにIoT向けに進化させたものや、スマートホームなど特定分野向けに最適化されたソリューション系ソフトウエアを含め、既に360以上存在するとレポートされいます。また、当該IoTプラットフォーム市場は、前年比で100増加する勢いが続いており、2019年には約1,000億円規模のサービス産業に成長すると予測されています。 *2 

 

デジタルエコノミー時代のイノベーションエンジンとしての「IoT」

テクノロジーの観点から、新たな課題が顕在化し、多岐にわたるスタンダード整備の必要性も併せ、多様な領域での技術革新が未だ現在進行中であるにもかかわらず、なぜ今これほどまでに世界中が“IoT”に注目しているのでしょうか? それは、IoTの本質が、「“つながり”によってもたらされるビジネス創造に向けたイノベーションエンジン」として位置付けられるからです。現実に、IoTをベースとする各種“スマートサービス”が、様々な産業分野のイノベーションを加速させ、世の中のパラダイムシフトを惹き起こしはじめており、これら成功事例があらゆる産業と社会へと波及し、そのデジタル化を一層加速させています。そのグローバル経済価値インパクトは、日本GDP比約2.5倍の1,100兆円規模に2025年に成長することが展望されています。 *3

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOAL and the IOT

 

IoTによってもたらされるビジネス成長ストリームには、“コンスーマIoT”と“インダストリーIoT”の2つが存在します。IoTビジネス市場は、まずはこの4〜5年の間に、ウエアラブルによる各種スマート健康管理や、スマートホームなどコンスーマ向けアプリケーションを中心とする“コンスーマIoT”市場が先行形成されました。2015年になり、パブリッククラウド大手 であるGoogle、Apple、 Amazon Web Services、Microsoftが一通りIoT 向けPaaS展開してきたことで、コンスーマIoT市場は成熟フェーズに移行中であると考えられています。

 

2016年、最新IoTビジネスの本命はインダストリーIoTへシフト

インダストリー領域においてIoTを活かした革新分野として先行しているのは、スマートマニュファクチャリング(デジタル製造業)、スマートシティ、デジタルヘルスケアの領域です。医療・健康分野は、各国ごとに異なる規制や制度が存在するにもかかわらず、IoTによる情報技術と健康・医療サービスを融合させるイノベーションにより、デジタルヘルスケアと呼ばれる産業が急速に拡大し、盛り上がりをみせています。IoT関連の技術革新を推進するシリコンバレーにおける最新動向のひとつとして、米国政府の推進する製造業における次世代ものづくり技術革新最新クラスターである「NextFlex」が開設されたことが注目されます。ここでは、医療、IT、製造の各産業界を横断的にまたがった産学連携オープンイノベーションプログラムによるウエアラブルセンサーなど生体シグナルを計測するセンサーや無線通信などの技術革新が加速され、先端的なデジタルヘルスケアソリューションやビジネスが次々に生み出されています。

 

FlexTech 2015年にSEMIの戦略的パートナーとして結合

 

スマートマニュファクチャリングは、GEによって提唱されたインダストリアルインターネット構想と、ドイツで先んじて取り組みの始まったインダストリー4.0 (第4次産業革命)として、日本をはじめとする先進国、及び中国やインドなど新興国を含めた次世代の産業競争力向上を目指した世界的なデジタル製造業の新潮流に発展しています。“インダストリーIoT”は、“AI”、“ロボット”などと融合し、第4次産業革命イノベーションエンジンとして位置付けられます。日本においても、現場を主眼においた「つながる工場」日本版インダストリー4.0に取組むインダストリアル・バリュー・チェーン・イニシアティブ(IVI)が立ち上がり、また、2015年10月に設立された産官学協議会「IoT推進コンソーシアム」が活動中であることに加え、2016年6月に発表された「日本再興戦略2016 - 第4次産業革命に向けて」 *4 では、新たな成長市場の創造領域として、”IoT”が、“AI”、“ロボット”と併せ重要領域にあげられています。

 

IoTを活用した価値共創最新アプローチ

“インダストリーIoT”に期待されているのは、スマートファクトリー、ロボットオートメーション、輸送交通、建設現場などにおいて“モノ”のつながりをもとに収集されるデータを分析することで、企業にとって顧客や取引先との結びつきを強化しながら競争力と生産性を抜本的に向上させる3つのイノベーション(プロセス、プロダクト、ビジネス)を起こしていくことです。自動運転など、産業分野向け インダストリーIoTシステムは、特定の産業やサービスドメインに特化されたIoTサービス群をネットワーク化し、エッジ・フォグコンピューティング、AIを含むビッグデータ活用によって生み出される各種スマートサービスを提供するためのデジタル化基盤です。しかしながら、エンドポイント、IoT クラウド、アプリで基本構成されるコンスーマ向けIoT利用モデルと比較した場合、“インダストリーIoT”向けIoTシステムは、複数のオープンデバイス、多様かつ膨大なサービス利用者、サービス連携者の組み合わせ利用環境などの違いから、そのシステムがより複雑になります。その結果、IoTサービスの導入に手間取り時間がかかったり、導入後の効果が期待通りでないなどの悩みを抱えるケースも多くみられます。

 

IoTサービス導入期間の比較(出典元:IoT Analytics 2016)
自社でスクラッチからシステム開発したケース(上段)と、IoTプラットフォームプレイヤーとパートナーした場合(下段)の比較

 

“インダストリアルIoT”におけるこうした課題を克服する最新アプローチ傾向として、事業部門・会社は汎用性に優れ柔軟なアーキテクチャーで開発された先端的なIoTプラットフォームプレイヤーとのパートナリングにより、求められるスピード展開と継続的な拡張性、スモールスタートを実現していくオープンイノベーション型の推進事例が増加しています。GE、SAP、IBMなど大手IT/クラウドプレイヤーに加えて、国内でもキャリア、SIer、IoTスタートアップによるプラットフォームが充実しはじめ、活況を呈しています。しかしながら、IoTビジネスの成功は、プラットフォームの適切な選択に左右される部分が大きいため、これらをアーキテクチャーベースにみてみると、①M2M/デバイスマネジメントプラットフォーム(例:Cisco Systemsによって買収されたJasper)と、②AEP (Application Enablement) プラットフォームに大別され、本来、理想的である全体的なサービスオーケストレーションをカバーしたIoTプラットフォームが現時点では少ないことも現実です。成長するインダストリアルIoT分野は、スタートアップによるイノベーションが先行する中、大手による活発なM&Aの流れや、アライアンス、エコシステムを通じたプラットフォーム間連携による価値共創アプローチが、着実な導入事例の拡大を牽引しています。

いずれにしても、 イノベーションの鍵となるサービス開発・提供を担うインダストリアルIoT向けプラットフォームレイヤーの今後の発展と、デジタル化時代のビジネスの波に乗り遅れないために、最新のコラボ型価値共創アプローチでIoTビジネスに積極的に取り組まれることが望まれます。 

>> 続く・・・ 第2号 インダストリーIoT市場拡大の鍵として期待されるフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE) -産業融合がもたらすエレクトロニクス産業のフロンティア-

 

*1 出典元:調査会社ガートナーレポート
http://www.gartner.com/newsroom/id/3165317
accessed December 9, 2015.

*2 参照元:IoT Analytics
https://iot-analytics.com/5-things-know-about-iot-platform/

*3 参照元:Unlocking the potential of the Internet of Things , McKinsey Global Institute June 2015
http://www.mckinsey.com/business-functions/business-technology/our-insights/the-internet-of-things-the-value-of-digitizing-the-physical-world

*4 出典元:内閣府「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」(平成28年6月2日) 
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/ 

 

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